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「最悪。」


ネクタイを締めながら言う言葉に思いっきり笑っているのはひーくんやった。ちゃっかりオヤジと一緒に来ていて隠れていたってどこまで俺をイジメるん?





おまけに家に勝手についてきてるし。






「俺をはめたん?」




「オヤジは忠義が良いって言うんだから仕方ないやん。あ、俺もいるけどサブね、サブ。」



「ひーくん専務やん、俺は単なる弟や。」




「英才教育受けた弟だろ?」





その言葉に俺は舌打して小さく息を吐き出した。




「そんなん受けてへん。」




「会社経営のノウハウ全部叩き込まれて何言ってんの?」




「俺はそんなん知らん。」




「嘘つけ。」





きっぱり言いながら俺の隠している某本を出してみてケタケタ笑っているし。




「ちょ、何見てん!」





顔を真っ赤にして雑誌を取ってすぐにベッドに投げるとげら げら笑ってるし。






「相変わらず隠す場所決まってんな。なに?最近はこの手の子が好きなん?」



「たまたまやって。」




「オヤジは知らんの?ゲイだってコト?」




「ひーくん!」





「女で出来ない事さっさと言わないと、あの人見合いの話思ってくるから気を付けとき。」





「見合いなんて受けへんし。」






洗面台に行きめったに使わないワックスを手に取った時覗き込んで言う言葉は「狭い。」その一言。





「息苦しくないん?狭くて?トイレと風呂が一緒とか……ホテルだけがええ。」



「はいはい、狭いですよ。でもな、給料で生活できる広さやガコレやねん。」



「金くらいあるやん。」




「俺は、自分で稼いだ金で生活したいん。」




「それでこれ?パティシエって金にならんの?」




「一流パティシエなら金はいいかもしれんけど、俺はまだまだやねん。あんまり文句言うたら行かへんで?」




「それ、ダメだから。」






何度も「狭い。」を口にしてマジ後ろから叩いてやろうか?そう思うレベルなにやけど。




「部屋の間取りは2DK?」



「2DKもどき。」



「アパートって言うのがなぁ。」



「安いねん。」



「隣の人の声聞こえへん?」







うぜえ……ひーくん。





革靴なんて使わへんから押し入れから取り出して玄関に置いてから目の前に映る自分の姿が死ぬほど嫌だった。







今日だけ




これは今日だけ




明日にはいつも通りだって言い聞かせて準備を続けた。




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作者名:瀬奈 | 作成日時:2019年12月3日 18時

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