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【僕には大事な人がいた。】







その記憶だけは消え失せていた。






オカンは教えてくれたけど、それがどういう人か迄は知らないと言う。荷物の中から見つけた少しの手掛かりは全く役に立たなくて半ばあきらめている時に……唯一残されてあった数枚の写真の中にいた彼がそこにいた。裏に書かれていたのは『大倉』そう書いてあったけど、どうして大切なのかは分からない。









何か世話になっているのは確かだろう。
一緒に笑った写真がその証拠だって。
だから、彼に声をかけた。







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----そうですか








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あの声、あの表情は……









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「絶望?」




「なんやいきなり。」





驚いた顔でそういわれてしまい、僕は言葉にしていたんやって今頃気が付いた。







「あ、いや……人がショック受けると絶句になるんやなって。」





「なるって。俺かてマルが記憶障害で覚えていたり覚えてなかったりとか言われて『はぁ?』てハテナが飛びまくったで。」




「すんません。」




「まぁ、仕事を覚えていた事だけありがたかったけどな。」




「ほんま、その節はご心配おかけしました。」





灰皿に押し付け僕は缶コーヒーを飲むと眼鏡のブリッジを軽く上げ新しい煙草を吸おうと思った時やった。






「そう言えば、あの時期だけは吸ってなかったな。」




「え?」




「いやな、不意に思い出したんよね。休憩の時に煙草吸っていた奴が急に吸わなくなった……考えたらあの時は記憶障害だったんかな?ってね。」






銜えてた煙草を僕は箱に戻してからゆうちんに言う。




「吸ってなかった?」





「あぁ、あの時はフロアで吸えた時代だったから。逆にそう言う事も気にできないくらい忙しかったから、あの時吸ってなかった事を言うてたら違ってたんかもしれんな。」






あの時の僕は何をしていたんだろう?







仕事終わってから……どこで過ごしていたんだろう?





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作者名:瀬奈 | 作成日時:2019年12月3日 18時

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