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別れを告げ、孤独を知る ページ7

じわりとその指先に炎が滲む
彼女が眉を顰め、十束が紫城の腕を掴む


「A」


咎めるような少しだけ鋭い口調と共に
同調された炎が鎮められる

振り払って火力をあげることも出来たが
紫城は大人しく炎を収め
彼女が手の力を緩めたのを見て、紫城もそっと手を離した


「君は、千歳が好きなの?」


呼吸がしやすくなった十束は
爪が食い込み血が滲んだ首筋を撫でながらも、紫城の手は離さず
そう彼女に問いかけた

すると
彼女は目を大きく見開き、それから伏せると首を横に振った


「好きな、人がいたの。
今でも忘れられない人」


彼女は語った

一途に好きだった人がいたけれど
彼は、彼女の力を知った途端姿を消したらしい

さよならさえ言われず
逃げられたのだと
それが悲しかった


千歳はその彼に似ていて
だから約束したのだと


朝起きたら
抱き締めて
さよならと言って欲しいと


彼女は再び千歳を探しに行き
十束と紫城はそのままバーへと戻り
経緯を草薙達に説明した

指切りマリア本人から聞いたという話に
十束の長所だと草薙は言ったけれど
紫城はどこか不満そうだ


「で、紫城はどないしたん?」


「…別に」


「まだ怒ってる?」


「怒ってない」


草薙にさえ素っ気ない態度を取るのは珍しい紫城だが
既に怒ってはいないらしい

確かに
怒っていると言うよりは…何かを消化しきれていない様な感じだ


「力があるから離れていく、か。
俺らとは逆ですね。

俺らは、力があるから集まったって言うか
そこに絆があるじゃないすか」


話を聞き終えた赤城のその言葉に
十束は曖昧に返し
紫城はちらりとそちらへ視線を向け、すぐにテーブルに伏せた

無事に帰ってきた千歳は
満身創痍だったが、しっかりと約束を果たしたらしい


「強すぎる力は、共有できないよ」


「ん?」


「特別ってのは
異端者と変わらない。

敬遠か憧れか。

人に囲まれてるから、孤独じゃないとは言わないんだよ」



独り言か
誰かへ向けた言葉か

伏せたまま放たれた言葉に
十束は紫城の指先に触れた





「A、熱ある?」


「は?」


十束の言葉に
グラスを思わず落としかけた草薙

のっそりと顔を上げた紫城の視線はまっすぐと向いているし
顔色も悪くない
極端に赤いわけでもない
試しに触れた額も熱くはない


「最近呑んでた薬は?」


「…なくなった」


「今日、何してたの」


その問いに
紫城は首を横に振るだけだった

抑制薬→←名の知れた殺し屋



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作者名:鍵宮 | 作成日時:2019年7月9日 19時

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