3．クソうるせぇ ページ4
「世一さん助けてっ」
イケメンから離れ、ぎゅもっと童顔の双葉さんに抱きつく。世一さんと身長が近いからか、親近感を覚えた。
「カイザーオマエこんないい子を誘拐したのか……見る目あるな」
「クソ違う」
違わないし世一さんの発言がだいぶ危ない気がする。
それと、イケメンさんの名前が分かってしまった。カイザーだってカイザー。顔も名前もイケメンとか憎すぎる。それと事あるごとに世一さんをボロカスに言う忠犬みたいな人はネスって言うらしい。
「世一さん、あのイケメンカイザーって言うんですか？」
そう言いつつ世一さんを見上げる。すると世一さんはにやりと悪い顔をして、俺にこそこそと耳打ちした。
「ミヒャ……？」
世一さんに言われた通り、お兄さんを見つめミヒャ……？ と言いながらこてんと首を傾げた。これでイケメンの慌てる顔が見られるはずとのこと。
「何いってんだコイツ」
俺と世一さんは舌打ちした。
少しの間、みんなでサッカーをして。カイザーとネスに俺はボロッカスな使い古した雑巾かのように雑に扱われた。おちょくられた、のほうが正しいのかもしれないな……。
けれど世一は違って、俺にサッカーを教えてくれたり頭ナデナデしてくれたりetc……。極めつけには爽やかスマイルで「タメでいいよ」って……！！カッコイイ。
「もっと世一と遊ぶんだ〜〜〜！！」
そうごねる俺の首根っこをカイザーは無言で掴んでずるずるずる……。
「うぅ…ミヒャぁ……」
もっと世一と遊びたいがあまり、ぼそりと言う。
けれどやはりカイザーは「クソうるせぇ」とのみ言うのだ。そんなカイザーにむっとした俺は、自身の体を引きずっているカイザーのタトゥーの入った腕を引っ剥がした。
そして先をぐんぐん進むカイザーの後を追いかける。
カイザーの隣に座った途端、彼は言った。
「誰にでもクソベタベタするな」
不満と怒りと、少しの嫉妬。その声色には何故か聞き覚えがあった。
「……妬いたの？」
おもしろ半分、からかうつもりでそう尋ねた。
「──クソうるせぇ」
否定しないカイザーを隣に、少し顔が熱を帯びる。それはカイザーも同様であった。カイザーはミラーで自分の顔が赤くなっていることに気づき、そっぽを向いた。
けれど、車に乗り込む前、詳しくは俺が不意に名を呼んだときからカイザーの顔が染まっていたことは本人には教えてやらない。
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作者名：ちばさんだよ | 作成日時：2023年9月2日 20時
