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mystery...8 ページ8

『一週間前だよ……』

「....っ、一週間も前だと!?」

『うん。
帰国する直前にベルモットに接触した』

零兄ちゃんが口を開く。……けれども、その言葉は私の耳には届いてこなかった。代わりに、顔を上げた風見さんの目は兎のように真っ赤だった。


(怖い……)


ふと、そう思った。
慣れ親しんでいるはずの風見さんが怖い。……いや、違う。風見さんの目が、色が、……何かがきっかけで心の奥にしまわれた箱を開けてしまうようで怖かった。

あまりの怖さに、自身の衣服をきゅっと握りしめた――その時だった。

ひんやりとした何かが私の頬を撫でた。

妙に擽ったくて、身を捩ると、突然頭上から声が降りかかった。


『ん……、』

いきなり重力に引っ張られた重たい瞼を押し上げる。

少しずつ開けていった視界に、さらさらとした金髪と焼けた肌が目にはいった。

「A、朝だぞ、起きろ。遅刻するぞ」

ゆさゆさと不規則な揺れを与えられ、何となしに不機嫌になる。


『んん……っ、揺らさないでよ。零兄ちゃん』

「起きたんなら、早くしろ……転校初日に遅刻してどうする」

今、さらっと聞き捨てならない言葉を口にされた気が。


『今、なんて……?』

「小学校、遅刻するぞ」

"小学校"!?
何年か前に聞いたことのある単語を口にされ、まだあまり回らない頭をフルスピードで回転させる。

小学校……小学校………小学校…………。


『ええっ!!小学校に行かなきゃいけないの!?』

「嗚呼。...というより、いってくれた方が都合が良いんだよ。

それにいつもいっているだろう?

自分で行った違法捜査は自分で片をつけろ、と。

自分で片付けられないことはないだろうが、片付ける準備くらいはしておけ」

そう言い残して、零兄ちゃんは完全にベッドから這い出た私から背を向け、部屋を出ていった。


『ええ……、なんでまた学校なんかに...』

そう呟いた私の声は、この無駄に広い部屋の中に溶けて消えていった。

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壟薇 - 面白いです!更新頑張ってください! (2019年9月19日 3時) (レス) id: ba5f7bf38b (このIDを非表示/違反報告)
ミモザ - すっごく面白いです!次のお話も楽しみにしています!頑張って下さい! (2019年7月26日 11時) (レス) id: 9414b767e6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:シャラルー☆ | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2019年4月28日 21時

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