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一階の一番奥の部屋。
そこは、彼女がいつも入るなと口うるさく言ってきた部屋だった。
鍵を差し込み、ドアノブを捻ればドアが開く。
その先は地下室へと続いていた。
少しの恐怖を抱えながらも階段を降りる。
地下室には様々な機械に囲まれていて、机の上、壁、床、ありとあらゆる場所に資料のような紙があった。
だが、そんなものよりもその中心にあるものに俺は視線を奪われていた。
「……は、？」
椅子に上品に座られた中一ほどの少女……いや、おそらく機会・アンドロイドのようなものか。
そっと近づき俯いた顔を覗くと、その顔はどこか彼女の面影があった。
近くの机に開いてあった日記らしきものを手に取る。
○日
病気で余命宣告をされた。
スマイルを置いて行ってしまうのかと考えると胸が痛い。
きっと彼は私がいなくなったら今よりも表情が死んでしまうだろう。
何か彼も支えてくれるものがあれば良いんだけど…
△日
彼を支えてくれるもの、彼の子供を作ってあげよう。
と言っても私には妊娠なんてできるわけない。
だから、彼を支えてくれるお人形さんを作ろう。
彼は子供なら女の子がいいって言ってたっけ。
〜〜〜
□日
やっと完成した！
危ない危ない。このまま死んじゃうところだったよ笑
きっと彼の誕生日に私はいないから、この部屋の鍵を私の部屋に隠しておこう。
彼はこの子にどんな名前をつけるのかな。
ぽたり、ぽたり
彼女の字が連なっている紙に雫が落ちて行く。
Aは、俺が悲しまないようにずっと作っていたんだろう。
病気で苦しい日もあっただろうに。それでもずっと…
近くに貼られていた資料を見て少女の心を稼働させる。
指が少し動いた後、少女は顔を上げてこちらを覗いた。
俺とおんなじ紫色の瞳は、ごく普通の人間のようだった。
「…お、父さん？」
「っ……うんっ。うん…」
優しく抱きしめてあげると腕を背中へ回してくる。
その動きはどうもAを連想させて、本当に自分達の子供のようだった。
頭を撫でてやればえへへ…と恥ずかしながら笑う。
そういえば、この子には名前がないんだったか。
なら…
「…スミレ、」
「？すみれ？」
「あぁ。お前の名前はスミレだよ。」
Aの大好きな、あの花を名前にしよう。
Aが残りの人生を捧げて作った少女。
嬉しそうに笑うスミレは、普通の家庭の子供と何ら変わり無い
ーーー俺たちの宝物だ。
．
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作者名：長月チョコ@09 | 作成日時：2023年10月12日 18時
