◆君に縛られる---nk ページ24
《前回の続編です》
「じゃあ、行こっか。」
『うん。早く行こ、せんせー。』
きりやんには出張と嘘をついて、俺はAとこれから海へ行くことにした。
電車に揺られて数十分経ったところに、綺麗な海が見える場所があるらしい。
流れていく景色を見ながら、たまにチラチラと彼女の方を覗いた。
彼女は特に何かを見つめるわけでもなく、ただただぼんやりと何処かを見つめているだけだった。
光の差し込まない電車、生憎今日は曇っている。
海を見るときは晴れるといいな。なんて思う。
「ついた。」
海の桟橋の上。
どこまでも続く水平線は、空が濁っているせいか
綺麗と呼べるかどうか。そんな景色だった。
『……へぇ、海ってこんななんだね。ただの大きな水溜まりじゃん。』
「どっかの黒猫みたいなことを言うね。」
「……雨、降りそうだね。」
『今日も雨、か………案外いいかもね。』
「そう？海は晴れてる方が綺麗だと思うけど…ッ？！！」
少し彼女から目を離したときだった。
突然体が水へと叩きつけられた。
ゆっくり目を開けていくとそこは真っ青な世界で、
俺の手を力強く掴んでズルズルと深海へ運ぶ少女の姿があった。
『あぁ…やっとこれで解放される……』
彼女はそう呟いた。
何処かで聞いたことがある。
地縛霊は恨みを果たすまで縛り付けられると。
彼女はずっと、俺に恨みを持っていた。
だから、殺したかったんだ。
でも……
これじゃあ俺は、君に縛りつくしかなさそうだなぁ。
『いいよ。別に。私は恨みを果たせて、好き“だった“貴方に縛られるんだから。』
ずっとずっと、縛りついてあげる。
君が病院に来た日も、君が死んだ日も、
俺が死んだ日も、雨だったね。
雨が降る桟橋の上で、
二人の恋人の幽霊は話した。
．
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作者名：長月チョコ@09 | 作成日時：2023年10月12日 18時
