◇冷えた手だって---sh ページ16
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カーテンから覗き込む光は、私の手元にある文字たちに注がれていた。
昼間とは違う、美しい白線。月の光だ。
最近のルーティーンに追加された寝る前の読書。
今日は月が綺麗に出ているので、月が近い窓際に寄って小説のページをめくった。
『ふ〜……やっぱ夜は冷えるなぁ』
手に息を優しく吹きながらぼやく。
時期も相まってか、夜は昼間の何倍も冷える。
カーディガンを着ているので手首まではまだ耐えれるが、空気に当てられページをめくり続けた指先は
薄ら赤くなっている。
そろそろ寝ようと小説に栞を挟みベッドへと向かおうとした時、寝室と廊下を遮断するドアがギィ…と音を立てた。
『お疲れ様。シャークん。』
「ん……ねむ…」
寝室に入ってきたのは彼氏のシャークん。
最近同棲し始めたのだが……流石実況者と言うべきか、彼は夜遅くまで動画の編集をしていた。
最初は体調が悪くならないのか心配していたが、同棲してから良くなった方だと言うのでごちゃごちゃ言うのは辞めることにした。
『…っあ!ちょちょちょっ!』
が、今回は流石に止めたい出来事があったのでベッドへととぼとぼ歩く彼を止めた。
「んぅ…なに?」
『いや髪濡れてるじゃん!枕濡れるし風邪引いちゃうよ?!』
「でもめんどくさい…」
彼は夕飯の後からずっと部屋にこもって編集していたので、お疲れモードでギリギリお風呂に入ったのだろう。だが、それで風邪を引いたら元も子もない。
『ほら乾かしてあげるからパッと乾かしに行こ?』
「…わかった。」
いつもと違ってふわふわとした彼の手を掴んでリビングへと向かった。
先にリビングに入っているよう言ってドライヤーを取りに行く。
ドライヤー片手に彼の元に行くと、彼はカーペットの敷かれている床に座って近くのクッションを抱いて待機していた。
乾かすよ?と聞けばこくんと首が動く。
それを合図に彼の髪を乾かしていった。
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作者名:長月チョコ@09 | 作成日時:2023年10月12日 18時