Friend Ship

言わない方が夢のため。 ページ30

源「ありがとうございました」

ニコニコと笑顔ではけていく源さん。
わたしは、涙が止まらなかった。

関「Aさん？大丈夫ですか？」

A「あ、いい歌だなと思って」

関「そうですね。でも、目腫れますよ？」

A「そうだね、止めないと」

関くんは何も言わずに温かいおしぼりをくれた。

関「目に乗せてください。ちょっと休憩して」

A「ありがとう」

私は、関くんに任せて荷物置きにある椅子に座っていた。

『好きなんだ。源さんが。』

認めてしまった。
今更言うのもどうかと思う気持ち。

どこかで、元恋人への未練に
理由を付けたかったのかもしれない。

まだ、忘れられないから。
この思いは無駄じゃないと、言いたくて
無理やりに好きにならないようにしていたような気がする。

A「…どうしよう」

夢に向かって行く源さんに気持ちを言うのは、
なんでかいけないよな気がする。

「試しで」と言ったのは私じゃないか。

源「Aさん、大丈夫ですか？」

A「…源さん」

目を塞いでも分かる。優しい低い声。

源「泣いてたから、心配しました。」

A「大丈夫です」

源「でも」

A「ほんとに。大丈夫です。」

源「歌のせいで、元恋人のことを思い出してしまいましたか？」

A「…」

今、そうですと答えたら。
源さんは私の思いに気づかないまま、
このまま、上手くいってくれるのだろうか。

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