EPISODE33 ページ5
ようやく終えた戦いに、肩の力が抜ける
そんな時に「実弥」と、呼ばれた気がして辺りを見渡すと
木にもたれかかり、ぐったりしているAの姿だった
「A!!」
駆け寄り、片膝をつき顔を覗き込むも
Aの表情は見えなかった
代わりに手を握ろうとしたとき、気づいてしまった
Aが消えかかっていることを
Aに残された時間は、残り僅かなんだと・・・
「不死川、Aはそこにいるのか」
「あァ・・・だがッ」
「後始末は俺がやっておく・・だから行け」
宇髄は掌を肩に乗せ
耳元で静かに呟いた、「後悔するな」と
「A・・」
俺はもう一度、彼女の名前を呼んだ
すると握っていた手が微かに動いた
「一緒に帰、ろう・・実、弥」
小さくも、たしかに聞こえた「帰ろう」の言葉は
心地よい風と共に吹き抜けていった
「帰るぞォ、一緒に」
Aを背負い、背中に体温を感じたことに安堵する
まだAはここにいる
「宇随ィ、ありがとなァ」
「いいから行け」
その言葉に応えるように
足を屋敷の方角へと向け、一歩ずつ進んでいく
「またな、A」
彼の声は誰の耳に届くことなく、消え
(宇随さん、またね)
彼女の声もまた、誰の心にも響くことはなかった
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作者名:玲兎 | 作成日時:2020年10月25日 15時