イロコイ・ライン 5th【ars K.N】 (ページ3)

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163.タカラモノ。ページ3

そのまま、いろはちゃんにLINEを送った。

何て言えば良いんだろう...って考えて考えて。

『先生が、恋人になってくれた』

先生の言ってくれた『恋人』って言葉が先生らしくて嬉しかったから、思わずそんな風に送ってしまって

トーク画面に出た自分の作ったメッセージを見てすぐ恥ずかしくなって、取り消したくなった。

その恥ずかしいメッセージはすぐに既読になって、それから五秒位で届いたいろはちゃんからの返事はたった一言。

『うそ！？』

思わず、プっと笑ってしまう。
どんな顔してるかも想像できる。

『待って待って！恋人って事は彼氏！？』
『付き合うの！？』
『告白はどっちから！？』

矢継ぎ早に質問が届いて、笑いながら一個一個に答える文章を作ってるとまた増えるメッセージ。

『やっぱ今は聞かない！直接、根掘り葉掘り聞きたい！！』
『Aちゃん、いつ休み？』

質問は先生の事から、私がいつ都合が良いか？って事に変わって

私のお休みの日にたまたまいろはちゃんは舞台の取材で直帰できる日があったから、その日に夕方から会う約束をした。
そこからは、久々のLINEだったから近況やお互いの仕事の愚痴なんかも送り合って。

深夜の1時近くなって、そろそろ寝なきゃねって『おやすみ』を送った後

『Aちゃん、本当に良かったね。何か私も泣けてきた』

最後に届いたいろはちゃんからの言葉に、私はまた泣いた。

・

その日から、いつも同じくらいの時間...だいたい、23時頃。

先生からLINEが届くようになった。

相変わらず、人影のままのアイコン。
絵文字もスタンプも無い、一見すると本当に事務的に見えるトーク画面。

だけど、その画面が先生そのもののようで私には愛おしくて仕方無かった。

『お疲れ様。今日も寒かったな。』

ポン、と浮かんだメッセージに『寒かったですね。先生、今何してるんですか？』と返せば『小テスト作成中。激ムズイの作ってやろうと思って(笑)』って返って来て『意地悪ですね(笑)』って笑ったり。

『お疲れ様。冬でもビールは美味い。』ってメッセージに『どこかお店で飲んでるんですか？』って返せば、木目のテーブルに乗ってる缶ビールと乾き物の写真が送られて来て、もしやこれは先生の部屋！？って思った私はその写真の色んな部分を拡大してはニヤニヤしたり。

何でも無いやり取りも、全部が私にとっては宝物みたいで。

私は時々、思い出したようにスマホをギュウ...っと抱き締めてしまうんだ。