イロコイ・ライン 5th【ars K.N】 (ページ2)

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162.あの日の私。ページ2

スマホの変化に気付いたのは、家に帰ってお風呂から出た時だった。

元々普段からあまりスマホを見る方では無い。
寝る前にちょっと見る位。

そのせいで、何時間も前に入ってたいろはちゃんのLINEになかなか気付かなかったりしてよく怒られる。

だから液晶にLINEの通知があるのに気付いても、いつも通りいろはちゃんだと思って「また怒られるー！」って慌ててスマホを開いた。

「......えっ！？」

でもそれは、可愛い愛犬がアイコンのいろはちゃんじゃなくって

初期設定のままの、人影アイコン。

『ちゃんと寝坊せずに、仕事行けましたか？』

先生だ...。

トーク画面の一番上に【二宮和也】って名前が出てる。

先生なんだ...。

時間を見ると、一時間も前に入ってたメッセージ。

早く返信...！って思ってるのに、緊張からか何度も誤タップしてしまって短い文章を作るのに5分位かかった。

『ちゃんと起きられました！先生は？』

最後を『？』にすればそれに答える為にもう一度メッセージが返って来るんだ、って前にいろはちゃんが言ってたのを思い出して、控えめに質問してみた。

ベッドの上にスマホを置いて、その前に正座。

既読がついた瞬間に「わっ！？」って声が出た。

暫くして届いた返事は

『何とかね。だけど集会で寝そうだった』

入学式で眠そうに大あくびをしてた先生を思い出す。

先生を初めて見た日。
目が合った...と感じたのは勘違いかとも思ってたのに。

「入学式でオレと目、合ったよな？」

そう言われて頭がボォっとしてしまったあの放課後の私に会えるのなら、教えてあげたい。

────貴女はこの先、長い長い片想いをする。
　辛くて痛い失恋もする。

　たくさん泣いて、泣いて、苦しくて泣いて。

　だけどその想いは、実るから。

　大輪の花を咲かせるから。

　 ...だから、頑張って。
　頑張って、恋をして。────

涙が、ボトボトとベッドに落ちた。

頑張って良かった...だなんて、ありがちな事しか思い浮かばないけど。

頑張って良かったんだ。

『先生って全校集会の時、いつも眠たそうでしたよね』

そう返せば

『何で知ってんの？』

そう、返って来る。

『先生ばっかり見てたからかな』

泣き笑いしながら、私は先生に返事を送る。

『ばーか(笑)』

短い返信が表示された画面に向かって

「フフッ...バカって言う方がバカなんですよー」

私は小さく呟いた。