イロコイ・ライン 4th【ars K.N】 (ページ32)

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152.TEA。ページ32

私の頭の上に手を乗っけたまんま、先生は私が泣きやむまで何も言わなかった。

はぁ...と息を吐くと、「落ち着いた？」って顔を覗き込まれる。

うん、と頷くと先生も頷いて立ち上がった。

「いてて...足、痺れた...」

フラフラしながら、部屋を出て行く。

部屋に残された私は、たくさんの本をボーっと眺めながら先生の言葉を心の中で反芻する。

「結城ー」

先生が向こうの方から私を呼ぶから、急いで立ち上がったら

「あっ...！いたた...」

私の足も痺れてて、そんなあんまり嬉しくないはずの共通点でも嬉しくなった。

壁に手を付きながら、フラフラと先生の声がした方へ歩いて行く。

辿り着いたのは、キッチン...というよりは台所。
床は板張りで、ステンレスのシンク。
花柄のテーブルクロスが掛かった、小さなダイニングテーブル。

そこで電気ケトルを持ってた先生が、私を見て「座って」って言う。

言われるままダイニングの椅子に座ったら、座布団が敷いてあった。
思わず、ポフポフと触ってしまう。

「ばあちゃんちって感じだろ？」
「フフッ、何だか懐かしいです」
「でも、うちのばあちゃんハイカラさんだから好きなのは緑茶じゃなくって紅茶なんだよね」
「オシャレですね！」
「でしょ？」

てな訳で...、って先生が綺麗なティーカップを私の前に置いた。
ソーサーとカップが、カチャンと小さな小さな音を立てる。

良い香りの湯気が鼻を擽る。

「ロイヤルミルクティー、どうぞ」
「えっ...先生って普段、紅茶なんて飲むんですか？」
「んーん、コーヒー派だけどね。これだけは、ばあちゃんに仕込まれたのよ」
「美味しそう...！いただきます」

熱いロイヤルミルクティーを、火傷しないようにソっと飲む。

椅子に横座りして脚を組んだ先生も、同じようにカップを傾ける。

「美味しい...」
「あっま」
「フフッ」
「ンフフ」

甘い甘いって言いながら、先生もミルクティーを飲む。
甘いって言う度に眉を顰める先生を見て私が笑うと、先生も笑う。

先生の淹れてくれた紅茶は、あったかくて、甘くって、何だか幸せに味があるならこんな感じなんじゃないかなぁ...なんて思った。

紅茶を飲み終えると、先生が「さてと」って立ち上がる。

あぁ...もう帰らなきゃいけないのかな...。

もっと一緒に居たいなんて...言えないけど...。

「そろそろ行こっか」
「...はい」

先生はそのまま玄関の方へ歩いて行く。

私も、その背中を追いかける。