さんじゅうきゅう。 朔間凛月side ページ42
Aは自分の死を悟っていた。
それでも、最期に笑った。
“俺とス〜ちゃんは一年長く居られるもんねぇ。セッちゃん達も留年すれば居られるけど”
あの言葉は、残酷なものだったんじゃないの…？
「…っ」
俺は手紙を持ったまま、教室を飛び出して屋上に向かった。
＊ ＊ ＊
黄昏時の屋上には、キレイな夕日が射していた。
美しい景色なんて、今の俺には毒でしかなくて、憎いものだけど。
一週間前の夜まではAがいた屋上。当然今は俺しかいない。
「Aは、本当に幸せだった？」
誰もいないのに、うつむいて小さく呟いた。手紙を疑う自分がいるから。
返ってくるはずのない答えを求めるなんて馬鹿みたいだけど、全て吐き出してしまいたかった。
こんな時ですら涙のでない自分を薄情なやつだなって、殴ってしまいたい。
──そんな風に考えないでよ、凛月君。
行き場のない感情にイラついて、叫びそうになったとき、屋上に声が響いた。いないはずの、Aの声が。
「…A？」
まっすぐに前を見ると、Aの姿があった。
──ちょっとだけ、心残りがあってね。幽霊になってみた
生前のように笑うAに、目を疑いながら近づく。
──ねぇ、凛月君。さっき本当に幸せだった？って聞いたよね？
「うん」
素直に答えれば、Aは不満そうに頬を膨らませた。
──酷いなぁ、手紙、信じてくれなかったの？幸せだったよ、とっても。
その言葉が聞けて嬉しかった。そっか、と答えればAはそうだよ、と無邪気に笑う。
良かった…本当に。
そう思った矢先だった。
──凛月君、本当にありがとう。もう一度言わせて。…大好き。
少しずつAは光に包まれ、光の粒子になって散らばる。あぁ、消えてしまう。
「俺も、大好きだよ！A、」
言葉を続ける前にAは消えてしまった。Aがいたところには光の粒子がキラキラと光っていた。
「…空から、見ててね。頑張るから」
空へと散らばった光の粒子を見ながら決意すれば、
──うん、もちろん。応援、してるからね。
さっきまでより小さく声が響いた。
そして、光の粒子が消えたと同時に、
ポタリと涙が一粒、地面に落ちた。
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マヒル - とても感動しました。これからも頑張って下さい。 (2018年8月19日 19時) (
レス) id: b3f1e97e99 (このIDを非表示/違反報告)
脳内パラレルワールド(プロフ) - 過去なのか、続きなのか、気になるとこできれてて、続きが気になる！ (2018年1月20日 1時) (レス) id: 51b674cbb9 (このIDを非表示/違反報告)
藍刻 零紗(プロフ) - オスカーさん» ありがとうございます！そう思っていただけるなんて、すごく嬉しいです(*´∀｀)やたらと掛け持ちしているせいで更新がかなり遅くなっていて申し訳ないです。改めて決意しました。更新頑張ります！ (2017年11月11日 17時) (レス) id: caba9fa115 (このIDを非表示/違反報告)
オスカー - 悲しいですが、読んでいて時間が忘れるくらい素晴らしい作品だと思いました！私も、夢主ちゃんが来世で皆とまた会うような話みたいです！更新頑張ってください！応援しています(*- -)(*_ _)ﾍﾟｺﾘ (2017年11月11日 17時) (レス) id: 662403215f (このIDを非表示/違反報告)
藍刻 零紗(プロフ) - あーりすさん» ありがとうございます！そう言ってもらえるの、とても嬉しいです(*´∀｀)番外編、いいかもしれませんね…。作るかも分からないですし、作っても望む話に出来るかはわかりませんが掛け持ちしてる作品とかが落ち着いたら少し考えてみます。本当にありがとうございます！ (2017年10月4日 19時) (レス) id: caba9fa115 (このIDを非表示/違反報告)
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