貧乏でウエディングドレスS【瀬名泉】

貧乏54 ページ9

高級マンション最上階…！

瀬名の家は一年前までの自分の家を思い出させたけど、天祥院さんの家は多分格別。差が大きすぎる。これが日本有数の財閥家御曹司の財力。

き、緊張する！

そんな私のことを見計らったのか天祥院さんは私を後ろから抱きしめた。ぎゅっと重りが私にのしかかるような感覚。突然のことに私はびっくりして手を払いのけた。

天祥院さんのいいなり＿＿＿＿。


あ、だめだ。払いのけちゃダメな手だったんだ。私はこの人に今お世話になっているんだ。瀬名も承知で嫌いな紅雷紅蓮に頭を下げている。
でも、それでも、瀬名以外とはあんまりそういうことはしたくないよ。


「あっ、その、えっと」

「………ごめんねA、急でびっくりさせてしまったかな」


でもね、そう言って天祥院さんは私が払いのけた距離を縮めてくる。私はその鋭い威圧感に喉を鳴らした。

この感覚、瀬名に似てる。

押し倒されるときの瀬名の纏う空気に、そっくり、いや、本物？


縮められた距離はもう０になる。少し痛いくらいに強くその手を握られている。痛さから逃れようと手を離そうとするがそれも全くの無意味。逆に懐へと身体を持って行かれた。

抱きつかれてる、瀬名以外に、ドラマ以外で。
振りほどきたい、けど振り解けない。天祥院さんは無言で私に顔を近づけて噛み付くようなキスをした。

「なっ、んぐっ…天祥…いんん…さ」


瀬名の優しいキスとは裏腹に噛み付くような乱暴で力強いキス。私はすぐに気持ちよくなって意識が飛びそうになった。この人はキスがうまい。

「ん…ぁあっ」

ようやく離れた唇に意識は完全に持って行かれて、荒い息を吐きながら天祥院さんにもたれかかった。瀬名以外とのキス、嫌なのに全てを支配されるキス。

逃れられない、絶対服従を誓わされたかのようなキス。


「………ふふ、A。想像以上に出来上がってるね」

「………瀬名に…いつも、キスで…」

「君をここまでにしたのは瀬名くんか。僕にとっては好都合だよ」


腰が砕けて立ってるのもままならない。天祥院さんの服にしがみついて支えてもらうが、このままではダメだ。喰われてしまう。

「案外僕は君を気に入っていてね。この際瀬名くんから奪ってしまおうかと思っているんだ」

天祥院さんは抱きしめる力を強くすると天使のような笑顔を浮かべて笑った。

「君を落とすまで何回でも今日はキスしよう」


そういって心も体も抵抗できない私は天祥院さんに唇を再度奪われた。

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