貧乏でウエディングドレスS【瀬名泉】

貧乏77 ページ32

いよいよだね、結婚式。


白いウエディングドレスを身に纏った自分を見て私は頬を赤らめた。フリフリとしたレースに彩られたラメ入りのジュエルを撒いて。さぞ、今の私は何処かのお姫様に見えることだろう。


「ほら、行くよ」


灰色のタキシードで私に手を差し伸べるお父さんは何回見ても美しい。私は彼の手をとって一歩踏み出した。

教会のドアがゆっくりと開いていく。


眩しいような、眩しくないような、そんな夢という名の光に目がくらむ。やっぱり、綺麗だ。


多くの拍手の中、私はまた、一歩ずつ踏み出して行く。


目線の先には、泉がいる。大好きでたまらない泉が、嬉しそうな顔をしてスッと立っている。衣装もバッチリ似合っていてまるで王子様だ。


「泉っ、」

「A」


ようやく泉の手が見えて私は抱きついた。拍手が大きくなって行く。大好き、愛してる。


「貧乏になっても、死にそうになっても、Aだけは守り抜いてみせるよ。騎士として、夫として」

「………はい」



私たちは顔を見合わせて微笑むと、顔を近づけてキスをした。優しくて暖かい、大好きなキス。けど今までとは格別だ。

結婚式での誓いのキスは今までで一番心があったかくなった気がした。


「守りたいってずっと思ってもらえるような妻になりたいなぁ」

「バーカ」


泉は私のおでこにデコピンをした。少し痛くてほっぺを膨らますが、泉は御構い無しにもう一度キスをする。


「努力なんてしなくても、守ってあげたいに決まってるでしょぉ？」


自信満々の泉の顔に少し内心笑って、私は泉を力一杯抱きしめた。

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