28話 ページ28
沈黙が続く中、
サスケは顔を上げながら「ワンワンッ！！」と吠え出した。
ハッと気づいた私は
その場に立ち上がって天馬と目を合わせた。
天馬は少し俯いていて
よく顔が見えなかった。
『…あ、あの…
サスケ…よく逃げるんだね…』
「はい…
よく逃げ出すんですよね、ははっ」
会話が続かない。
凄く気まずい雰囲気に耐えられずにいたが
私の心臓はバクバクと鳴っている。
この音、天馬に聞こえてしまっているのか
気になってしまう。
『…あ、えと
それじゃあまた…明日…
…サスケ、またね』
サスケの頭を撫でてから
そう言い残して家に帰ろうと再び歩き出した。
天馬の横を通り過ぎても
天馬はその場から動こうとしなかった。
やっぱり私、嫌われたのかな…
でも嫌われても無理ないよね。
複雑な気持ちのまま、歩いていると
「せっ…先輩ッッ！！！」
大きな声で名前を呼ばれ、
その場で私は立ち止まった。
振り向く勇気はないけど、
立ち止まることは出来た。
「…先輩、
先輩を傷付けてしまってすみませんでした。」
突然、謝られて私は咄嗟に
天馬の方を振り向いた。
天馬を見ると、凄く悲しそうで
見ているこっちまで悲しくなる。
なんで謝るの…？
悪いのは私なのに…。
「先輩にあんな事をして…
俺、ダメですよね…
先輩、綺麗だし美人だから
きっと彼氏さんとか居たはずなのに…」
その言葉を聞いたと同時に、
右肩に掛けていた鞄を投げ捨てて
天馬の手を掴んでぎゅっと握りしめた。
「…えっ!?
せせせ、せんぱっ…」
『…謝らないでよっ！！！
天馬は何も悪くないよっ！
私がキミを傷付けてしまったんだよ…
なのに…どうして…天馬が謝るの…っ』
「…A先輩…」
どうして天馬の手を握っているんだろ。
自分からしたくせに
身体中が熱くなっていくのが分かる。
天馬…
私をドキドキさせないでよ…っ
＿＿＿＿＿＿＿＿
天馬、サッカーと同じくらい
A先輩の事が好きだと思いますよ？
ごめん…
葵ちゃん………
私の方が天馬を好きみたいなんだ。
……………
『天馬…私…っ
私ね…』
ゆっくりと顔を上げると
そこには天馬の顔が近かった。
勇気をだして…
私は天馬の手をぎゅっと強く握りながら伝えようとした。
『天馬のことっ…！！！』
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作者名：れいにゃん | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2018年3月21日 1時
