梅雨の終わりに愛を唄う【壱】 (ページ4)

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衣織「知ってたか？代々梅雨柱は18歳までしか生きられないらしどうして？』

聞き返すと、兄は素振りの手を止めて、隣に座った。

衣織「梅雨には終わりがあるからね…梅雨の呼吸の使い手になった隊士や剣士はそれに肖り、寿命が自然に縮んでしまうんだ」

『ぇ、じゃあ、兄上は、18には死んじゃうの？』

衣織「!?、アッハハハ!!なわけないだろう！」

兄はそう笑って、また素振りを始めた。私も心配しながらも
兄の訓練について行った。

ーーー三年後ーーー

継子になって三年が経った。

『……兄上……お身体の具合は…』

最近、兄の具合が悪い。先日は吐血をしたり、任務でしくじ
り大怪我をおったりと、実力を出せないでいた。

衣織「…A」

『はい』

蝶屋敷で療養を強いられた兄は弱々しい声で話しかけてくる。
その姿が、三年前の母と重なり胸が苦しくなった。

衣織「梅雨の呼吸は…霞の呼吸の派生呼吸だ」

『霞の、呼吸…霞柱のですか？』

衣織「そうだ…霞は水だ…霞が蒸発すると雨が降る」

『それが、なにか…』

衣織「お前は梅雨の呼吸の使い手にはなるな…お前には…寿命を全うして欲しいんだ……約束、してくれるか？」

『……』

私はそれを、約束する事は出来なかった。代々伝わる梅雨の
呼吸を途絶えさせたく無かったのだ。例え18歳までの命だと
しても、父の名誉と梅雨の呼吸だけは受け継いでいきたい。

衣織「……A……お願いだ…約束してくれ…」

『…あ、兄上…』

兄は、昔の母のように優しく笑って…

ドサｯｯｯ

息絶えた。

『あ…兄…上…？……兄上!!』

兄は、もう私の名前を呼んでくれなかった。そればかりか
身体が冷たくなるばかり。

『兄上………』

ｽｯ…

ゆっくり襖が開くと胡蝶様がいらした。隣には御館様。

『……御館様…胡蝶様…兄が…兄が…!!』

胡蝶「…Aさん…」

『胡蝶様!!兄を診てやって下さい!!まだ、まだ間に合う
はずです!!胡蝶様!!』

胡蝶「……お兄さんは…もう…」

『……そんな……兄上……ぃ、衣織…兄様』

御館様「!!」

あぁ、私は…兄を、一度も名前で呼んだ事が無かった…。
昔からの母のしつけで、兄は兄上と呼べと言われてきたから。
でも、兄の名前を呼ぶ日がこんな事になるなんて……。
全部、全部……

鬼のせいだ。

鬼を殺さなきゃ。

抹殺しなきゃ……。

滅ぼさなきゃ…………醜いあ奴らを…

徹底的に、排除しなきゃ。