弐拾肆 ページ25
『無一郎!!無一郎目を開けて!!』
「A…ご、めん…僕…」
『駄目!!私、私まだ…貴方に…貴方に…』
目の前には無一郎の血が広がっていた。
私の腕の中で荒く息をする彼。
「……継子に、なってくれて…ありがとう…僕…すごく幸せだったよ…ｹﾞﾎｯ…だからッ」
『…無一郎』
「君は…君、は……生き……て……」
ドサッ…
彼の手が、力無く地面に落ちた。
支える手が、腕が震える。
『…無一郎……大好きだよ……泣』
「……」
返事の何も無い。
『ぅぅぅ…無一郎ぉぉぉ……』
『ﾊｯ…はぁ、はぁ…』
ゆ、夢か…。身体中は汗だらけだった。隣を見ると、無一郎は規則正しい寝息を立てて寝ていた。
『(悪い夢を見たな…)』
いきなり泣きたくなって、布団を濡らさないように自分の枕を抱えて泣いた。
もう、失いたくない……。大切な人を、失いたくない。
ﾌﾞﾙﾌﾞﾙ
恐怖で震える。雨の音が頭に反響した。
『……ｸﾞｽｯ』
「…泣いてるの？」
『!!む、無一郎…』
無一郎は身体を起こすと私を見た。部屋は電気が無くても、相手の表情が見えるくらいは明るかった。
「悪い夢でも見たの？」
『……無一郎を…失くす夢を、見た…』
「!!」
『私は…私はｯ……怖い……』
「どうして？」
『ッ…私にとって…無一郎は…大切な人、だから』
部屋に沈黙が流れる。
「大切な、人？」
『私は…私は無一郎が好きなの!!泣』
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作者名：見習い小説家 | 作成日時：2023年7月12日 12時
