梅雨の終わりに愛を唄う【壱】 (ページ22)

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弐拾壱ページ22

アスファルトの匂いが鼻を刺激する。ザーザーと振り続ける雨をベランダで眺めながら、ボーｯとしていた。

『(あれ…無一郎、和傘持っていったけ？)』

柱合会議のため屋敷を出て行った無一郎をふと思い出す。
玄関に出て傘立てを見ると、しっかり(？)和傘が立ててあった。

『見事に忘れてる…』

私はなんの躊躇いもなく和傘を二本持って屋敷を出た。もう一本の赤い和傘をさし、青い和傘は腕にぶら下げる。

『…降ってるなー…』

向かい雨だから若干肩に雨がかかる。
産屋敷の入口まで歩いて行くと、無一郎を待った。

陰「A様、柱合会議はまもなく終わります」

『ありがとうございます』

しばらく待っていると、遠くから誰かが走ってくるのが見えた。
顔には大きな傷跡。私と同じで和傘を二本持っていた。

？「あ?お前誰だ」

『そっちこそ』

？「俺は不死川玄弥…お前は？」

『伊集院A』

生意気な男の子と話していると、柱達が会議室からゾロゾロと出てきた。無一郎は岩柱様と並んで近ずいて来る。

『「師範ッ!!……え/あ？」』

2人同時に発した言葉にびっくりする。玄弥さんは和傘を岩柱様に、私は無一郎に同時に差し出したのだ。

玄弥「お前…継子だったのか」

『そ、そっちこそ…』

なんと2人とも同じ目的で来ていたのだ。

「ありがとう、A」

悲鳴「悪い事をしたな、玄弥」

『「いえ!!…なんで被せてくんのよ/だよ!!」』

揉め合いになる私達の間に刀の鞘が仲介に入ってきた。その刀は間違いなく無一郎のもの。

「玄弥、だったっけ？仮にもAは甲なんだ。規律を重んじる産屋敷邸の前では上下関係に気をつけて。分かった？」

玄弥「……っうす」

「じゃ、行こっか」

和傘をさして先を歩く無一郎について行くと、少し行ったところで立ち止まった。

『…無一郎？』

「こっち来なよ…A傘のさし方下手くそだから肩濡れてる」

『なっ!へ、下手くそじゃない!』

「はいはい」

傘を持つ手を下に下げられ、無一郎の傘の中に引き寄せられる。その瞬間、鼓動が激しくなった。

「これで濡れない…傘閉じなよ、邪魔になる」

スっと自分の傘を閉じると、並んで歩き出した。

「Aの手、冷たい」

『ﾋｭｯ…そ、そうかな？』

無一郎の暖かい手が私の冷えきった手の平に添えられた。

調子狂う。心臓もたない。