梅雨の終わりに愛を唄う【壱】 (ページ20)

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拾玖ページ20

無一郎「僕の稽古メニュー通りにやってたらこんな事無かったのに…裏でさらに稽古してるでしょ」

『ヴッ…は、はい』

ピンッ!!

『いだ！』

時透様はデコピンを食らわすと、呆れながら言った。

無一郎「追い込みすぎ」

『…すみません』

無一郎「追い込んでも今日みたいに痛い目みるよ」

『はい…』

初めて、面と向かって怒られた。時透様は立ち上がると手を差し伸べてくる。

無一郎「立って」

『え？』

無一郎「聞こえなかった？立って」

大人しく立ち上がると、腕を引かれて屋敷の裏に連れていかれた。真夜中の屋敷裏。

『ぅわあ!!綺麗…』

そこには、無数の綺麗なホタルが飛び交っていた。

無一郎「息抜き…させてなかったら」

『時透様…』

無一郎「あのさ、そろそろ名前で呼んでくれない？」

『え!?』

無一郎「ずっと苗字呼びじゃ歯痒いから」

なんて呼ぶべき？「無一郎様」、「無一郎」、「むいくん」…。いや、流石にむいくんは失礼だわ……。

『んー…無一郎様、ですか？』

「…様いらない」

『無一郎』

「ん。あと敬語も要らない」

納得したように、再びホタルを見つめた。無一郎の瞳に写るホタルが綺麗で、ジッと見ていたかった。