梅雨の終わりに愛を唄う【壱】 (ページ2)

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壱ページ2

私の家は半家だった。
平和に幸せで暮らしていた
私たち家族。

母の由芽は摂家の長女だったらしいが、父の鋼に一目惚れし、「摂家の長女」という名誉を捨て、父に嫁いだのだとか。

そんな幸せな家に産まれた私は、Aと名ずけられた。

『父上!どこに行かれるのですか？』

鋼「あぁ、今から御館様という方のところに行くんだよ」

『御館様？偉い人？』

鋼「あぁ、とっても偉い方だ」

父は毎日のように軍警察が着るような服を着て刀を持ち家を
出て行っていた。だから、家族でお出かけなんて言ったこと
がない。

『……』

衣織「そんな拗ねるな…お父上だって大変なんだ」

『兄上』

兄は衣織と言った。女みたいな名前だと村の人達に蔑まれて
いたが、兄はそれに怯まず堂々と立っていた。

衣織「お前も伊集院家の人間なら、お父上の事を理解しなければならない。分かったな？」

『はい！兄上！』

だけど、その日…父が帰ってくる事は無かった。

『母上…父上は？』

由芽「大丈夫よ、A」

次の日の朝、父と同じ隊服を来た男性が来た。ジャラジャラ
と宝石を付けている。

天元「鬼殺隊音柱の宇髄天元です。梅雨柱の伊集院鋼殿が昨夜、上弦の鬼に殺められました…お力になれず申し訳ありません」

由芽「…いつかこの日が来るだろうと覚悟しておりました…夫はなにか…？」

天元「貴方様と衣織殿、それからA殿へ、手紙を預かっております」

なんの話をしているのか、7歳の私には理解出来なかった。
兄は下唇を噛み締め、悔しげに涙を流していた。

由芽「…感謝します……衣織、涙を拭いなさい」

衣織「ッ…はい、母上様…」

『兄上…？』

キョトンと兄を見つめる私を、天元様は悲しげに見下ろし、
優しい手つきで頭を撫でて下さった。

天元「A殿…成長するに連れて、貴方もいずれお分かりになられるだろう…」

『……？』

天元様の仰った通り、9歳で父が死んだのだと理解した。
他にも、父が「鬼狩り様」だった事。家が代々梅雨柱の
家系だという事。

それと同時に、上弦の鬼への怒りが最高潮に達した。