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こんな気持ちになったのは、生まれて初めてだった。

純粋な怒りでも、悲しみでもない。


例えるとするならば、

胃の中で真黒な液体が、ぐつぐつと沸騰しているような、

そんな感じ。


みくるを見れば憎悪が溢れ出してしまいそうで、

だから必死に顔を下げて、顔が見えないようにする。



小さい頃から今までずっと、

嫉妬なんてしたことがなかった。

一人っ子だったから、親の愛情もすべて

私に注がれていたし、

勉強ばっかりしてきたので、中学卒業まで首位の座を譲ったことはなかった。

…友達は全然いなかったけれど、

それが特段辛いとは思わなかったし、

むしろ一人が好きだったので、

クラスの人気者になりたいとも思わなかった。




この胸の中で昏く燃え上がるどす黒い炎の正体こそが、

嫉妬という感情なんだろう。



気を緩めると泣いてしまいそうで、

だから一言も声を出さない。


他人の前で泣いたことなんて

生まれてから1度もない。


他人の前でみっともない所を晒すなんて、

これからも絶対にしない。



そう、思っていたのに。

「どしたの、オマエ」

「A、どうかしたかい?」

…瞬きをした拍子に、涙が2,3粒ボロリと零れ落ちた。


「うわっ、何お前、泣いてんの?」

「A!?」

五条と夏油の、ギョッとしたような声が聞こえる。


そりゃそうだろう、私の泣き顔なんて、見たことなかっただろうから。








Aが、泣いていた。

宝石みたいな碧い眼に、透明な膜が張り、

あとからあとから煌めく雫となって、ぱたぱたと落ちていく。



夏油がAの泣いた顔を見るのは初めてだった。

その原因が自分達にあると分かっていながら、

その顔がどうしようもなく美しいと感じた自分は、悪い男なのだろうか。



罪悪感がないと言えば噓になる。

だがしかし、Aが自分以外の男と二人で笑いあう姿なんて、

見たくなかった。だから邪魔をした。それだけのこと。



湊くんと呼ばれている青年が、

どうしようもなく羨ましかった。

Aにこんな顔をさせることができる彼が、

たまらなく、妬ましかった。

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白音 - すっごく面白い!!更新、楽しみにしています!! (11月19日 17時) (レス) id: 24b42eab7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのふ(プロフ) - さくらのきういさん» いえいえ、全然同担拒否とかじゃないです、むしろ好きなものを共有することができる人がいるって凄く素敵で嬉しいことですよ!!ですよね、エヴァ自体、ストーリーを良く知っている人がそんなにいないんですよね…。この作品を好きだと言っていただき、嬉しいです!! (2021年6月28日 7時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
さくらのきうい - カヲル君カッコいいですよねー。学校で話しても誰も知らなくって。あっ同担拒否とかじゃないですか?そうだったらごめんなさい。この作品すごく好きです!応援しています! (2021年6月26日 9時) (レス) id: 65d75c56ec (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのふ(プロフ) - リリさん» 好きすぎるだなんて…照れます(*´ω`)面白いと言って下さり光栄です、ありがとうございます!! (2021年5月29日 21時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)
ゆきのふ(プロフ) - 赤ちゃんさん» マジですか!?良いかもですか!? (2021年5月29日 21時) (レス) id: c629cc7e2d (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆきのふ x他1人 | 作成日時:2021年1月19日 13時

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