検索窓
今日:4 hit、昨日:42 hit、合計:78,730 hit

8話 ページ8

檻の中へと入り、することもなくぼうとしていると不意に扉が開いた。
今度は白衣を纏った初老の男だった。
うっすらと、袖口が赤く色づいているように見えるが、気にしないでおこう。

「ふむ、これはいい」

突然男が口を開いたと思えば、腕にギリ、と痛みが走る。
強引に腕を引っ張られ、無理やり立たされた。

じろじろと、まるで品定めでもするかのように私を見て、何も言わず私を部屋から出す。
部屋から出た後も、私のことなどただの道具のように、手荒く腕を引っ張りながら廊下を進む。

着いた先はオペ室のような場所。
ベッドの上に横にされ、私達より先にここにいた人達が拘束具で手足の自由を奪う。
肌に触れる枷が異様なまでに冷たい。
何をされるか分からないという恐怖より、この部屋の冷たさに吐き気がした。

「それじゃあ、実験を始めようか」

白衣の男が手袋をはめながら周りの人に言う。

そこからの記憶はほぼないに等しい。
目を閉じるよう命じられたあと、頭に違和感を覚えた。ひんやりとしたそれに、少しくすぐったいと思いながら。
それから、白衣の男の声がして、頭に痛みが走って――。

それからは全く覚えていない。
目を覚ますと部屋の中にいた。

何があったんだ?
頭に電気ショックを喰らったというのは分かるのだが、彼らは何がしたかったのだろう。
私は何の実験を受けたんだ?

ズキズキと痛む頭に違和感と不快感を覚えながら、ため息。
ベッドに身体を預け、目を閉じる。
ああ、もう、面倒くさい。このまま眠ってしまおうか。
意識を闇に沈める。
そのとき、足音が冷たく響く。

「699番、誰が寝ていいと言った」

また違う人だ。
白衣を着た、アジア系の顔立ちの男。
冷たく私を睨む。

「飯の時間だ。さっさと行け」

それだけを言い残してどこかへと行ってしまった。案内をしないということは今朝と同じ部屋なのだろう。
それにしても、私についていなくてよかったのか? もしかしたら脱出してしまうかもしれないのに。

重い身体を起こして部屋へと向かう。
今思うとこの体は毒には結構強いようだ。実験を受ける少し前から、あの気味の悪い吐き気は収まっていた。
まあ、今からその吐き気をまた味わうわけだが。

キィ、と錆びかけたドアを開けて椅子に座る。
数分もしないうちに料理が運ばれてくる。
今回も、味のない冷めたミネストローネだった。

9話→←7話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.4/10 (37 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
79人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

- いえいえー当然の事を言っただけですー喜んで貰えて光栄ですよー それと、音域を広げる練習、頑張ってくださいー諦めずに頑張れば報われるはずですからねー ふむ、来月ですかーコトハ@白亜さんの小説は奥が深いのでーワクワクしますねー楽しみにしてますー (2015年8月21日 12時) (レス) id: 7c8a29757a (このIDを非表示/違反報告)
コトハ@白亜(プロフ) - 杏さん» 返信ありがとうございます。そう言っていただけると作ってよかったと思えます…ありがとうございます。なるほど、その方法がありましたね…早速試してみようと思います。アドバイスありがとうございます。せめて再来月までに公開できるよう頑張ります…! (2015年8月20日 18時) (レス) id: 5c05607229 (このIDを非表示/違反報告)
- 大丈夫ですー、ミーも返信遅くなってすみませんー 気に入った作品にコメントするなんて当たり前じゃあないですかー 音域が狭い、ですかーピアノで音を取ると結構出やすいですよーあとは、歌いたい曲を練習してー音域を広げるのもいいと思いますー 続編、待ってまーす (2015年8月20日 15時) (レス) id: 7c8a29757a (このIDを非表示/違反報告)
コトハ@白亜(プロフ) - 杏さん» 返信ありがとうございます、遅くなってすみません!わわ、続編までコメントいただけるんですか…ありがとうございます!嬉しいです!音痴というか出せる音域が狭いんですよね…なので歌が上手い人羨ましいのです… (2015年8月19日 0時) (レス) id: 5c05607229 (このIDを非表示/違反報告)
- はいー、頑張って下さいー続編出来るまで此処を見に来たりしましょうかねー 一番に作品を見に行ってコメントしたいですー…音痴?そんなのカラオケが悪いんですー声の質は様々じゃないですかー (2015年8月17日 11時) (レス) id: 81089b7519 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:コトハ | 作者ホームページ:   
作成日時:2014年6月13日 17時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。