イロコイ・ライン【ars K.N】 (ページ27)

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27.落下。ページ27

目を開けると、真っ白な天井が見えた。

え...ここ、どこ...？

視線を動かそうとすると、頭がズキっと痛む。

「......」

私が少し体勢を変えると、静かな部屋に衣擦れの音が響いた。

腕を挙げて目の前に翳すと、シャツの袖が捲られていて肘に包帯が巻いてある。

「結城さん、起きた？」

カーテンの向こうから聴こえたその声が保健の戸田先生だと気付いて、ここが保健室だってコトを理解する。

「あ...はい...」
「大丈夫？」

カーテンを開いた先生が「あ、寝てて良いからね」って、起き上がろうとした私を制する。

「あの...私...」
「教室で倒れたみたいね。酷い熱よ」
「倒れた...」
「倒れたってゆーか、意識失くして椅子から落ちたって聞いたよ？二宮先生から」
「...二宮先生...」

まだ、この名前に私は胸が、ギュウ...ってなる。

「肘、打ってたから湿布してるからね」

そう言われて、さっきも見た肘の包帯を眺める。

「結城さん、自分で熱あるの分からなかったの？凄い高熱なのに」
「え...？あぁ、えっと...これ位なら大丈夫かなと思って...」

フゥ、と困ったように溜息を吐き出した戸田先生が私の寝てるベッドの横に椅子を持って来て座った。

私も布団の中でモゾモゾと先生の方に身体を向ける。

「厳しい事を言うようだけどね？」
「...はい」
「結城さんが大丈夫だと思ってても、その風邪がクラスに広がっちゃうかもしれないよね？」
「...あ...」
「この時期だよ？みんな受験を控えてるんだし、ちゃんと人の事も考えなきゃ」
「...そう...ですね...ごめんなさい」

自分の身勝手さに気付いて、恥ずかしくなる。

そんな私の頭を、戸田先生がフワフワと撫でた。

「フフッ、分かったら良いの！早く治そうね。結城さんも受験なんでしょ？」
「はい...」
「先生も心配してたからねー」
「......え？」
「二宮先生、フフッ。『熱、すげぇんだけど！』って焦ってたよ」

先生が私を心配...

「そうそう、結城さんをここまで運んで来てくれたのも二宮先生だからお礼言わなきゃダメだよ？」
「......先生が...運ぶ？」

運ぶ...って？
まさか、台車に乗せて運ばれたとか...あの先生ならやりかねない...。

キーンコーンカーン...

チャイム鳴ったけど、今が何時間目なのかも分からない。

その時、ガラガラとドアが開く音がして

「戸田ちゃーん。結城、起きたー？」

聴きたいのに、聴いたら胸が痛くなる

大好きなのに、大嫌いな声が聴こえた。