イロコイ・ライン【ars K.N】 (ページ14)

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14.質問と答え。ページ14

何となく落ち着かなくって、ソファに座る。

でもソファの革に汗を掻いてた太ももがピタっと引っ付いた感じがして、ここに座ったのは失敗だったな...ってすぐ後悔。

「さっきここから出て来た女の子が...泣いてました」
「うん」
「......」
「それで？」
「それで...って...先生が泣かせたのかなと思って...」

先生は黙ったまま、ジィっと私を見てる。

「...えっと...」
「先生が生徒を泣かせるって、どーゆー状況だと思う？」
「え...？怒られたり...とか」
「じゃ、それで良いんじゃない？」

私の答えを訊くと、先生は鞄を持って立ち上がった。

...帰っちゃう...！

焦った私は、思わず「嘘です！」って大声を出してしまう。

「は？」
「本当はあの子が怒られたから泣いてたなんて、思ってません...だって、先生は生徒を泣かせるほど怒らない」
「分かんないよー？実はすげぇ鬼教師かもしんないでしょ？」
「......」

何も言わない私に、先生はハァ...と小さく息を吐き出してソファにドカっと座った。

先生の重みでちょっとだけソファが沈む。

「質問に答えただけよ」
「質問...ですか？」
「そ。それだけ」
「...どんな質問ですか？」
「きっとお前は興味の無いようなコトだよ」
「興味あるかどうかは、私が決めます」
「フハッ！確かにそれもそうか」

膝に乗せた鞄の上で人差し指をトントンさせながら、先生は口を開いた。

「先生のファーストキスはいつですか？って」

聴き慣れた声が、聴き慣れない言葉を紡いだから、耳が混乱してる。

「それを正直に答えただけ」
「......いつなんですか？」
「えー？興味あるかー？」
「...まぁ、ちょっと」
「普通だよ？全然面白くない答えよ？」

心臓がバクバクして、隣に座ってる先生に聴こえてしまわないかそれが気になって仕方無い。

「16」
「...16」

普通だろ？って笑った先生のトントンと動き続ける指から目が離せないのは

何だか顔を見れないから。

「オレがそーゆーコトした事あんのがショックだったらしいんだけどさ、オレもう三十路なんだけどな。人並みの経験値あるのが、それこそ普通でしょ」
「それはまぁ、そうですね」
「自分から訊いて来たのになぁ...オンナノコの気持ちは、難しいわ」
「先生には分からないかもしれないですね」
「ンフフ、かもな」

先生、私には泣いてたあの子の気持ちが分かるよ。

嘘でも「してない」って言って欲しかったんだ。

先生とキスした人が居る事が

その事実が、悔しいんだ。