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前編 ページ1

「ねぇ、A。部活いこっ!」

僕の目の前にいる人は天使のような笑顔で話しかける。

彼の名はうらた。僕の想い人だ。
一応補足しておくと、僕も男、彼も男だ。

僕は一応、“ノン気”のつもりだ。
でも、彼には、“性別”なんて概念が関係ないのである。

女だから。男だから。そういうの抜きで惚れてしまった。

「おいAどうした?早く行くぞ?」
「あ、うん!」

僕らは“演劇部”の一員だ。

うらたはキャスト、僕は裏方。詳しく言うと、うらたはメインキャスト、僕は音響。

別にキャストになりたいわけではないが、彼と僕は光と闇。

太陽と月並みに違う。
実際クラスでも、彼は人気者、僕は平凡。

演劇部でもないかぎり、彼と僕には接点すらなかっただろう。

音響は、本番までにタイミング、雰囲気作りをやらなければならない。

だからキャストの演技を見てられる。

うらたのことをずっと見れる理由にもなっている。


「A!!どうだった?」

うらたが演技についての意見を求めてきた。

「うーん、やっぱりもう少し抑揚がほしいかな。あと課題は声量と滑舌じゃない?」

「厳しい!!…でも、やっぱりそっか…ありがと!」

「あ、でも、歌は良かったよ。」

「歌ねぇ…。俺この役絶対“歌が上手いから”で選ばれたの悔しい!!」

「いいじゃん、立派な才能じゃん。キャストで歌歌うなんてざらにあることだし。」

そう言うともっとふてくしてしまった。

「俺は実力で選ばれたいの!!」
「うーん、メインキャストやってたら、演技力すごい上がると思うけど…。」

それに僕はどんなに脇役でも演技してるとこ好きだよ。

そう言いそうになったけど、まだ死にたくないから黙った。

「…Aはすごいよな。」
「え?僕?」

すごくなんてない。
うらたの方がすごいと思うが…。

「周りのことよく見てるし、俺の演技についても、誰よりも的確なアドバイスくれる。」
「それは…。」

惚れてるからよく見てるだけだよ。なんて、とても言えないが。

「俺はAのこと尊敬してるよ。」

そんなこんなを話してたら、演出に声をかけられた。

「あのさ、さっきのシーンもう一回通すんだけどさ、A代役で入ってくんない?」
「え!?でも僕音響…。」
「お願い!本当のキャストの人がイメージつかめないみたいだから…。この部男子少ないし、男子全員一通り代役やってもらいたいの!」

いや、このシーン…。






うらたとハグシーンなかったっけ?

後編→



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作者名:レイニャン | 作成日時:2019年7月30日 12時

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