あし天・別館【コメ返とオマケ】 (ページ15)

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『夜行バスなら安いよ！』ってメッセージを送って来た翔くんに、『おじさんもう、9時間もバス移動耐えられない』って返したら爆笑してるスタンプ。

「新幹線っていくらだっけなー...翔くん、おれに休み合わせられんのかな...」

大阪行きに前向きになりつつ、仕込みの続き。

9時を超えた頃、まだ準備中の札を掛けてるにも関わらず店に入って来た一人のお客さん。

「あ、すいません。まだ準備ちゅ...あ。じゅんじゅん」
「...おはよ」
「勤務明け？」
「んー...。眠い...」

眠いなら早く家に帰ったら良いのに。

「ラーメン食べたくって来ちゃった」
「まだ開店前なんだけどなぁ」
「何だとう？お巡りさんに逆らうつもりか？逮捕するよ？」
「職権乱用甚だしいねぇ」

ふふっと笑うと、じゅんじゅんもクスっと笑う。

「11時まで待ってても良い？」
「良いよ」
「じゃあ、寝かせて貰おうかな...」

カウンターに座って、ペターっと顔を伏せてる。

「良いよ、って待ってて良いよって事じゃないよ？」
「ん？」

伏せてた顔を上げて、じゅんじゅんが首を傾げた。

「ラーメン、作ってあげるよってゆー『良いよ』だったんだけど。まだいらない？」
「いるっ！」

凄い勢いで身体を起こした彼は、お巡りさんってよりもモデルさんみたいな男の子だ。

男の子...？いくつだっけ、じゅんじゅんって。
スーツ姿のじゅんじゅんがネクタイの結び目に指を入れてキュっと緩めた。

「お巡りさんってスーツ通勤なんだねぇ」

ラーメンを作りながら、そんな世間話。

「公務員らしい服装で通勤しなきゃいけないからね」
「そっかー。あ。公務員のじゅんじゅんなら知ってるかなぁ」
「ん？何を？」
「大阪まで新幹線のチケットっていくら？」
「フフッ。それ、公務員関係ある？」
「何か、何でも知ってるイメージ」

大阪まで...と呟きながら、じゅんじゅんがスマホをポケットから出した。

何か調べてくれてる。

「通常は15000円くらいだけど、早割とか使えばもうちょっと安いよ」
「早割...」
「うん。ほら、JRのサイトで...って、何て顔してんの？ハハハッ」
「もう既に面倒になって来た...」

出来上がったラーメンをじゅんじゅんの前に置くと、湯気をスゥっと吸い込んで「うまそ」って微笑む。

ズズーっと良い音を立てて麺を啜った彼が、今度は「うまっ」って笑う。

この仕事してて、良かったなーって思う瞬間。

旨いモンは裏切らないからね。