あし天・別館【コメ返とオマケ】 (ページ14)

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『ある日のサトシ』ページ14

店の開店は11時。

のんびりしてるとおもわれそうだけど、仕込があるから普通のサラリーマン位の時間には起きてる。

とは言え、働いてるのはおれ一人だし呑気なもんだ。

今日も仕込みをしてたら、カウンターに置いてたスマホがLINEの着信音を鳴らしたからチラっと目をやった。

「...ん？」

濡れてた手を前掛けで拭いてスマホを手に取る。

「あはっ。翔くんだ」

トーク画面には『おはよう、智くん』の文字。

何だろう。
わざわざ朝の挨拶？
恋人じゃないんだから。

『おはよう、翔くん。どうしたの？』

すぐに既読が付いて、すぐに返事が返って来る。

『大阪には何でもあるんだ。特に食う物は、腐る程ある。腐ってないけど。』

...よく分からない。
分かんないから、はぁ？って顔してるスタンプ送った。

『でも無い物もある。』
『うん。何が無いの？』
『三十四のラーメン！』
『チェーン店じゃ無いもん』

そう返すと、既読はついたけどさっきのような速さでの返事は来ない。

「...何だったんだろう...寂しいのかな」

男一人で大阪に単身赴任...って、元々単身なんだから、この言い方はしないのか。

あ。でも彼女できたよねぇ、翔くん。
あーけど遠距離恋愛か。
やっぱ寂しいのかな。

『ごめん、ちょっとヤカンが爆発してた。』

暫くして返って来たメッセージが衝撃的過ぎて、持ってた菜箸を落とした。

『爆発！？翔くん、生きてる！？』

送ってから、生きてるからLINE出来てるのか...って冷静になってちょっと恥ずかしい。
何でLINEって送ったメッセージ消せないの。

『沸騰してるの気付かなかったわー。熱湯が注ぎ口からバシャバシャ零れてた。』
『それ、爆発じゃないよ』
『気分的には爆発だった。でさ、本題なんだけど』
『うん』
『通販してよ、三十四のラーメン。』

通販...

やだよ、面倒臭い。

『出張三十四でも良いよ？』

えー...大阪まで行くの？
やだよ、面倒臭い。

『既読無視しないでー』

続けて泣いてるスタンプ。

『寂しいの？』

送ってから思わず、ムフッって笑ってしまう。

翔くんは、あー見えて寂しがり屋だ。
大阪に行くって決まった時に、寂しいって言いながらラーメン食べてたのをおれは何度も見てるから。

『智くん。大阪、遊びに来ない？』

メッセージの後にダダダっと並ぶ、大阪で有名なラーメン屋さんの写メ。

『寂しいんだね』
『ちょっとね(笑)』

素直な翔くんに、おれは『考えとく』って返事をした。