――の自覚 ページ48
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もうすっかり空は闇に包まれ、不気味なほどの静けさが身を突き刺す。
体の痛みで思うように動かないものの何とか窓を開けて外の様子を確認した。
一見いつも通りではあったが、明らかに全体的な魔力濃度が上がっている。
これはつまり、大規模なサーヴァントの戦闘がどこかで起こった事を意味している。
思い当たる節があるとすれば、あの悍ましいキャスター陣営だ。
きっと彼らの"パーティー"とやらが始まったのだろう。
時々鳥肌が立つ程の空気の乱れが起こるのは、もしかして…いや、もしかしなくてもあの男の王気によるものだ。
戦っている。彼が離れたどこかで。
そう思うと、どうしようもなく苦しくなる。
そこへ行きたい。
そこへ行って、あの人が戦う姿をこの目に焼き付けたい。
なのに、私の体はそれを許さない。
それが悔しい。
ズキリ
嗚呼、まただ。
なんなんだ本当に。
あの男が現れて、私の中のすべてが壊れていった。
感情を理解できるようにはなった。それは感謝しているのだ。
でも、こんな胸が引き裂けそうな苦しみが感情であるというのなら、私はそんなの知りたくなかった。
だって、とても耐えられそうにない。
涙だってすぐに出るし、自分がどんどん弱い人間になっていくのがわかるんだ。
あれだけ恩を感じていた師ですらどうでもよくて、
私の頭にあるのは、居座り続けるのは、いつだってあの人だった。
彼の負けは想像していない。だからその点では心配していない。
それでも、サーヴァントである限り、必ず別れが来る。
座へと帰りこの世を離れて消える定めがある限り、その時は絶対に訪れる。
嫌だ。
そんなの嫌だよ。
身勝手で、醜くて、馬鹿な願いだけれども
聖杯の獲得なんかよりも
もっと
もっと
強い願いが、今の私にはある。
――部屋に残る微かな魔力、たったそれだけの事で、私がこれ程まで満たされいてるのは…
彼にずっと傍にいてほしい。
彼の傍にずっといさせてほしい。
彼の隣で、今度は私本人に向かって、あの美しい笑顔を見せてほしい。
――感情を知って、いや、知る前から本当は気づいていたんだ。この気持ちの本当の名は…
きっと貴方に言えば、鼻で笑われるでしょうけれど
それでも自覚してしまった以上、この気持ちは捨てたくないのです。
――――――――― 「恋」だって。
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カエデ - もう更新は絶望的かもしれませんが、いつまでもお待ちしております😭 (10月8日 14時) (レス) id: e7e0135c10 (このIDを非表示/違反報告)
指導者は白痴、かかってこいや当局 - まじかよ本当にいいとこで終わってんな、、、 (2021年8月26日 23時) (レス) id: 55ab4f5815 (このIDを非表示/違反報告)
Na Ryu(プロフ) - うそん!!?めっちゃ良いとこで終わってるー!! (2021年1月4日 9時) (レス) id: e0675e6765 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - コメント失礼します。ギルガメッシュが好きでこの小説を読み始めました。続きがものすごく気になります!更新頑張ってください!! (2020年6月12日 17時) (レス) id: 5728e25ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月21日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:またたび | 作成日時:2016年6月19日 6時