私だけを ページ44
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歩くギルガメッシュの後ろをついて行く。
会話は無いため、足音が妙に大きく響いた。
気まずい。
だがそう感じているのは私だけなのだろう。
目の前の男は私に被っている別の誰かを見ているのだ。
そう、私ではない。
その時、私の胸の奥は何かつっかえた様に重かった。
この感情は何というのだろうか。
拒絶された時とはまた違った重みだ。
どちらかといえば、セイバーの話をされた時の様な。
ただ、ただ苦しかった。
息をする事すら辛かった。
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嫌だ
私の頭に浮かんだのはその二文字。
何が嫌なのか、そんな事わからない。
でも、とにかく嫌だと思った。
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『ギルガメッシュ。』
呼び止めるつもりは無かったが、咄嗟に口が開いていた。
ギルガメッシュはこちらを振り返り、私が要件を言うのを待っている。
その表情は本当に穏やかで、きっと相手が"私"だったら見せてくれないものだった。
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嫌だ
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『嫌だ!!』
突然大声を出した私にギルガメッシュは戸惑っている。
「……何だ。」
『ふざけるな!!』
脈絡の無い私の発言に流石に苛立ちの方が勝ったようで、いつも私が見る様な表情に戻る。
「我に対してその物言い、いくら貴様とて―― 『その"貴様"は、私じゃない!!』…!」
そうだ、私じゃないやつの事を話すな。
『私は、お前に……!!』
本当に見て欲しいのは――
『"私"だけを見て欲しいのに…!!』
私がギルガメッシュに抱く感情は"欲"だ。
そして、これは独占欲とでも呼ぶのか?
この男を自分のものにしたい。
自分だけのものに。
その想いがこの胸の苦しみの原因なのだろうか?
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「黙れ、小娘。」
『!!』
ギルガメッシュの冷たい声にハッと前を見る。
その視線の中に映っているのは、あの人じゃない。
私だ。
「貴様如きが、我を求めるなど万死に値する。疾く失せよ。」
背筋に走る悪寒。
嗚呼、私は知っている。
この後私は―――
「死ね。」
胸を貫かれる感覚がわかる。
だが、痛みよりも先に私に走ったのは
歓びだった。
死にたいわけじゃない。
けど、この人になら
この人の手で殺されるなら
こんなにも幸せな事は無い。
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ふっと意識が浮上した。
体を起こすとそこはいつもの寝台の上。
夢。
ただの夢だとわかって、わかっていたのに、
涙が何故か止まらなかった。
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カエデ - もう更新は絶望的かもしれませんが、いつまでもお待ちしております😭 (10月8日 14時) (レス) id: e7e0135c10 (このIDを非表示/違反報告)
指導者は白痴、かかってこいや当局 - まじかよ本当にいいとこで終わってんな、、、 (2021年8月26日 23時) (レス) id: 55ab4f5815 (このIDを非表示/違反報告)
Na Ryu(プロフ) - うそん!!?めっちゃ良いとこで終わってるー!! (2021年1月4日 9時) (レス) id: e0675e6765 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - コメント失礼します。ギルガメッシュが好きでこの小説を読み始めました。続きがものすごく気になります!更新頑張ってください!! (2020年6月12日 17時) (レス) id: 5728e25ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月21日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:またたび | 作成日時:2016年6月19日 6時