私ではない誰か ページ43
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意識が浮上する。
乾いた風が頬を撫でたのがわかった。
目の前に広がるいつぞやの古代の風景。
『……また、ここ。』
だが前回見た夢とは違い、私自身がその場にいる様だった。
見渡しの良い高台に出来た美しい建物にただ独り。
賑やかな人の声も聞こえない。
『……なんだか……、変。』
誰か一人くらいはいないものかと、建物内をうろうろと徘徊する。
いない。
いない。
誰もいない。
『……どうして?』
以前の誰かの夢では、姿は見えずとも民衆の活気が、声が伝わってきていた。
だが今は人どころか、生物の気配すらない。
広い敷地を歩き続けたが結局足が疲れただけだった。
ふと視界に一際異彩を放つモノが入る。
『……これは…』
それは玉座だった。周りを飾られ豪勢でありながら、どこか静かなギルガメッシュのいた場所。
私は思わずその石の席に腰かけた。
ひんやりと冷たい王の椅子は、とても心地よい。ぼんやりとウルクの街を俯瞰する。
そして同時に思う。
"あの人は、ここにずっと独りで座っていたのか" と。
常に民の上に立ち、誰一人隣に並ぶことを赦さず、ただ独りずっと―――
いや、違った。
その時私の脳裏に浮かんだのは、あの美しい若草色の長い髪。
そうだ、そうなのだ。
あの人だけは―――
彼の隣に立つことを赦された、彼にとって
唯一の
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「そこで何をしている。」
突然響いた男の声に、私は肩を震わせ声のした方へ顔を向けた。
目が見開かれたのが分かった。
そこにいたのは、古代の服装を身にまとった
ギルガメッシュ王、その人だった。
「…我の席に何故座っている。」
『…あ…』
はっ、と自分の今の状況を思い出す。冷汗が滝の様に流れる。
殺される。
そう確信した、
のに
「…まあ良い。此度は赦す。」
『…はぁ?…』
我知らず間抜けな声が漏れる。
ギルガメッシュが
赦した?
いや、この異常な光景は最近も見たような気がする。
「……何をしているのだ、行くぞ。」
『…ど、何処に?』
私の質問に、ギルガメッシュはきょとんとした顔で見つめてくる。
「なんだ。まさか、覚えていないなどとは言うまいな?」
『……えっ、と……』
「………今日は、我と共に森で狩りをすると言っていたではないか。」
そして気づいた。
そっぽを向いてそう告げた男が見ているのは
私ではない。
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カエデ - もう更新は絶望的かもしれませんが、いつまでもお待ちしております😭 (10月8日 14時) (レス) id: e7e0135c10 (このIDを非表示/違反報告)
指導者は白痴、かかってこいや当局 - まじかよ本当にいいとこで終わってんな、、、 (2021年8月26日 23時) (レス) id: 55ab4f5815 (このIDを非表示/違反報告)
Na Ryu(プロフ) - うそん!!?めっちゃ良いとこで終わってるー!! (2021年1月4日 9時) (レス) id: e0675e6765 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - コメント失礼します。ギルガメッシュが好きでこの小説を読み始めました。続きがものすごく気になります!更新頑張ってください!! (2020年6月12日 17時) (レス) id: 5728e25ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月21日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:またたび | 作成日時:2016年6月19日 6時