歪んだ感情の向く先は ページ38
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一時の奇跡は消え、再びアインツベルンの城に戻ってくる。
アサシンは既にこの世になく、残ったサーヴァントは3騎のみ。
「――お互い言いたい事も言い尽くしたよなあ。今日はこの辺でお開きとしようか。」
「待てライダー!私はまだ――」
さっさと帰ろうとするライダーをセイバーは引き留める。
それも当然だろう。彼女はまだ納得していない、いや、出来ないのだから。
だがライダーは聞く耳を持たなかった。
セイバーの語る理想は、やがて彼女自身の最低限の誇りすら消し去る。
そう言い放ち、ライダーはマスターと共に戦車でこの場を去った。
セイバーの表情は未だ晴れない。
私は自分がギルガメッシュに思いっきり抱き着いたままなのに気づき、急いで離れる。
沈黙が広がる。
それを破ったのは、ギルガメッシュだった。
「耳を傾ける必要は無いぞ、セイバー。」
私は唐突に口を開いた事に驚き、ギルガメッシュの方へ顔を向ける。
「お前は正しい。己が信じる道を行くがよい。
人の身に余る王道を背負い込み、苦しみに足掻くその苦悩、その葛藤!
…慰め物にしては中々に上等だ。」
「くっ…」
ギルガメッシュの言葉に、セイバーは顔を顰める。
「せいぜい励めよ、騎士王とやら。事によるとお前は、更なる我が寵愛に値するかもなあ。」
高笑いと共に金色の粒子となって消えた男に、彼女は何も言い返せなかった。
『…では…私もこれで…』
ギルガメッシュが消えた以上、私がいる必要は無かった。
そそくさとその場を去り、城を離れる。
最初は駆け足だったが、次第にその速度は落ち最終的に私の足は動かなくなった。
『……ハア』
足を止めた原因は決して疲れたからでは無かった。
今、私は
猛烈に腹立たしかった。
何にこんな感情を覚えているのか、わからない。
でも、凄く嫌だった。
頭に浮かぶのは、騎士王と名乗るセイバーを見詰めるギルガメッシュの姿だった。
どうして
どうして彼女を見るんだ
そっちじゃない
見て欲しいのは
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「何をしている、真彩。」
急に名前を呼ばれ、振り返る。
そこにいるのは、私を見詰めている、ギルガメッシュだった。
そうだ
これでいい
だがこの男も私の異変に気がついたらしい。
「何だ貴様その顔は……妙に頬を引き攣らせおって。」
言われて漸く筋肉に変な力が加わっている事に気がつく。
『何でもない。』
「…ならば良い、行くぞ。」
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カエデ - もう更新は絶望的かもしれませんが、いつまでもお待ちしております😭 (10月8日 14時) (レス) id: e7e0135c10 (このIDを非表示/違反報告)
指導者は白痴、かかってこいや当局 - まじかよ本当にいいとこで終わってんな、、、 (2021年8月26日 23時) (レス) id: 55ab4f5815 (このIDを非表示/違反報告)
Na Ryu(プロフ) - うそん!!?めっちゃ良いとこで終わってるー!! (2021年1月4日 9時) (レス) id: e0675e6765 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - コメント失礼します。ギルガメッシュが好きでこの小説を読み始めました。続きがものすごく気になります!更新頑張ってください!! (2020年6月12日 17時) (レス) id: 5728e25ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月21日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:またたび | 作成日時:2016年6月19日 6時