理想の王 ページ34
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私の予想は的中していたようだ。
ライダーの差し出した柄杓を受け取ったギルガメッシュは軽く口をつける。
「何だこの安酒は。こんな物で本当に英雄としての格が測れると思ったか?」
不満であるといった顔でライダーに言い放つ様は、傍から見れば恐ろしい気迫があるやもしれない。
が、この男がどういう性格なのかを知ってしまっている身としては、わざとらしさに吹き出しそうになる。
「見るがいい、そして思い知れ!これが王の酒というものだ。」
わざわざゲート・オブ・バビロンを展開して取り出した金色の杯を、ライダーに向かって投げつける。
きっと、ここに一般人がいたらあまりのシュールな映像に笑ってしまうであろう光景が広がる。
いや、寧ろ気味悪がって近づこうともしないかもしれない。
大の大人三人が、一つの大杯を囲み座り込んでいる。
これは一般人ではなくとも、「関わりたくない」と思うだろう。
先程までは英雄の集う宴会に、凄まじい王気を感じていたのだが、ギルガメッシュが加わった事で何とも異様な空間に仕上がってしまった。
そう思っているのは、この場で私だけだろうが。
そうこうしているうちに、話は聖杯についてと変わっていった。
ギルガメッシュは聖杯を自らの所有物だと豪語するが、勿論それで諦めるなり譲るなりする訳もなく。
ライダーは王としての生き方を語るギルガメッシュから、「奪う」と宣告する。
まさしく、征服王。どこまでも自我を曲げない、それ故の王。
私はこの大男に、英雄王とはまた違った意味での英雄の質を感じた。
自らの欲望のまま世界を進み、けれどそこには果てしない夢がある。だからこそ、民は彼を慕ったのだと。
国を治めても、孤高であり続けたギルガメッシュという王とは何もかも違う。
どちらが理想か、と言われたら、私はどちらを選ぶのだろうか。
それでも、何となくだけれど………
頭の奥にちらつく涼風色の髪に、答えを決められてしまっている様に感じる。
「……そんなものは、王としての在り方ではない。」
不意に、凛とした女性の声が響き渡った。
王と呼ぶには些か愛らしさの残る女騎士の声だ。
「…ほう?では貴様の胸の内、聞かせてもらおうではないか。」
ライダーの言葉に、暫しの沈黙が広がる。それを破った彼女の言葉はライダーやギルガメッシュは勿論、私をも驚かせるものだった。
「私は、万能の願望器をもってして…ブリテンの滅びの運命を変える。」
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カエデ - もう更新は絶望的かもしれませんが、いつまでもお待ちしております😭 (10月8日 14時) (レス) id: e7e0135c10 (このIDを非表示/違反報告)
指導者は白痴、かかってこいや当局 - まじかよ本当にいいとこで終わってんな、、、 (2021年8月26日 23時) (レス) id: 55ab4f5815 (このIDを非表示/違反報告)
Na Ryu(プロフ) - うそん!!?めっちゃ良いとこで終わってるー!! (2021年1月4日 9時) (レス) id: e0675e6765 (このIDを非表示/違反報告)
ちぃちゃん(プロフ) - コメント失礼します。ギルガメッシュが好きでこの小説を読み始めました。続きがものすごく気になります!更新頑張ってください!! (2020年6月12日 17時) (レス) id: 5728e25ca4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆめの - コメント失礼します^o^凄く面白いです!更新頑張って下さい!応援しています! (2020年4月21日 19時) (レス) id: a922e9fda4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:またたび | 作成日時:2016年6月19日 6時