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連絡先教えて！と言われて、断る理由を見付けられなかった。
まー君は翌日には電話をしてきて、その週末に飲みに行く約束をして。
私達は付き合ってた時によく行ってた居酒屋さんで会った。
一度付き合ってただけあって、話題に困る事なんか一瞬も無かった。
趣味も、好きな芸能人も、何でも知ってる。
一から相手を知ろうと探らなくっても良い。
私のグラスが空いたら、まー君が「カシオレで良いよね？」って追加オーダーしてくれる。
実はもうカシスオレンジなんてほとんど飲まなくなってるんだけど、私が好きだったお酒を覚えてくれてるのが嬉しくて。
久し振りに飲んだカシスオレンジは、甘くて、ちっともお酒の味なんかしなくって。
ちょっとでも大人に近付きたかったあの頃の恋心を、思い出させてくれた。
私達はそれからも時々会うようになった。
スーツ姿のまー君も見慣れたし、今の私はビールの方が好きなんだってのも伝えた。
まー君は相変わらず唐揚げが好きで、お化け屋敷が怖いらしい。
「ねぇ、まー君」
対面で唐揚げを頬張ってるまー君に言うと、彼はほっぺをパンパンにしたまま目線を私に寄越す。
「ずーっと訊こうと思ってたんだけどね...」
「うん？」
「...私と飲んでても良いの？」
「え？何で？」
ビールで唐揚げを流し込んだまー君が、テーブルに身体を乗り出すようにした。
「ほら、彼女とか！居たら、他の女と飲んでる場合じゃないでしょ？」
左手薬指に指輪が無いのは、最初に気付いてた。
でも、結婚してなくても彼女は居るかもしれない。
それを今まで訊けなかったのは、まー君との時間が楽しかったから。
「Aちゃんは？彼氏、居ないの？」
「居たら、まー君と飲まないよ」
「でしょ？俺も同じ」
「え？」
「彼女居たらAちゃんと飲まないって」
まー君がタハっと笑って、ビールを飲む。
「もう周りは結婚してんのになー！」
「まー君、結婚したいの？」
笑って私もビールを飲む。
「俺、結婚どころか女の子とそーゆーコトすらもうずーっとシてないからね？」
「アハッ！何、それ。下ネタ？」
「えっちぃコト、シたいなー...」
「ばーか」
「お嫁さん、欲しいなぁ...」
「フフッ」
テーブルに突っ伏してるまー君の頭のてっぺんを指でグリグリ。
「ねぇ、Aちゃん」
「ん？」
顔を上げたまー君が
「俺とする？」
内緒話のように囁く。
「え...何、を？」
彼が、見た事の無い目をして笑った。
・・・・・END・・・・・
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作者名：rei
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/personal.php?t=reika72
作成日時：2017年2月22日 17時
