智あり雅やかな君に、潤い和み我も翔ぶ。【ars短編集】 (ページ16)

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●D・S・M・L！【A】ページ16

セーラー服とブレザー、どっちが好き？って訊かれたら「どっちも好き！制服大好き！」って答えてた俺。

だけど、ちょっと前から俺は断然セーラー服派。

高校三年になる春。
俺んちは引っ越した。

引っ越したって言っても、隣町。
じいちゃんとばあちゃんが家をリフォームして、やたらでっかい家になったから俺らの家族と同居する事になった。
じいちゃんに聞いたら「わざと広くしてお前らを呼んだんだー！」なんてガッハガッハ笑ってたけど。

母ちゃんとばあちゃんは「嫁姑って何それ美味しいの？」位に仲良しだし、人数が増えて楽しいし(まぁ、口うるさい大人が増えたのはちょっと面倒臭いけど)俺の部屋も6畳から10畳になったし、何の不満も無い。

ただ、転校はしなくて良いんだけどチャリ通は出来なくなった。
いや、出来るんだけどすっげぇ遠い。

だから俺は、人生で初めての電車通学。
人生で初めての定期。
人生で初めてのパスケースは、大好きなショップで売ってる革のやつにした。
使えば使う程、味が出るってゆーやつ。

初めて、新しい家から登校する三年生初日。
そのパスケース越しにIC定期を改札にピっとして。
何か妙に大人な気分で、ホームに立つ。

ブレザーから出してるパーカーのフードがちゃんと出てない事に気付いてキュッキュと引っ張ってたら、俺の隣に女の子が並んだ。

チラ、と見ると

チラ、と見られた。

三秒くらい目が合った時、電車がホームに入って来て二人ともそっちを見た。

満員。

人生初の通勤ラッシュ。
俺は通学だから、通学ラッシュ？

開いたドアの向こうに広がる地獄絵図に、一瞬たじろいでたら後ろからグイグイ押されて地獄の中へ。

「うーぅ...」

苦しい...
毎朝これに耐えなきゃなんないの！？

もう遠くても良いからチャリにしよっかな...
あ、ダメだ、定期券三ヶ月分買ってる。
今更チャリ乗ってったら、母ちゃんに何言われるか分かんない。

「いてっ！」

足を踏まれて、もうやだよぉって思ってたら

「ごめんなさい！」

俺の足を踏んでる犯人が、謝った。
それはさっきの女の子で、すっげぇ困った顔して「動けなくなっちゃって...」って頭を下げてる。

「あ...大丈夫、です...」

電車が揺れて、その子と身体がムギュっと密着した。
足は余計にグニィって踏まれて「ホントにごめんなさい...」って、彼女が謝る。

「ダイジョブダイジョブ！」

シャンプーの匂いにクラクラしながら、苦笑い。

それが二ヶ月前のコト。