智あり雅やかな君に、潤い和み我も翔ぶ。【ars短編集】 (ページ44)

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本当は、興味の無い『振り』を続けてた。

カズの彼女が変わる度に「またー？」なんて呆れた顔を見せながら、心の中では「どうして私じゃないんだろう...」と思っていた。
でも、カズが彼女と別れる度に自分のポジションが一番オイシイんじゃないか？と思って。

だけど大人になってまで近くに居れるとは思ってなかったから、家が近所だって知った時は「運命の相手なのかもしれない」なんて思ったっけ。

結局カズは、社会人になってもすぐに彼女を作って。
駅で彼女と仲良く歩いてる彼と鉢会った時は、頭の中で『運命』が鳴り響いた。ジャジャジャジャーンって。絶望。

雨はどんどん強くなって、傘にちゃんと入ってるはずの私の体もどんどん濡れて来る。
髪も湿気でフニャフニャ。

カズの家に着いた時、傘なんて意味あったんだろうか？って程に二人ともビショ濡れで

思わず顔を見合わせて笑った。

「入んなよ、タオル貸してあげる」
「え？良いの？」
「そのままだと風邪ひくよ？もしかしたら小降りになるかもしんないし、あったかいコーヒーでも淹れてやんよ」
「うっそ！カズが？明日は雪？」
「はぁ？オレはいつだって優しいだろ」

鍵を開け、部屋に入って行くカズの後から私も部屋に入る。

「お邪魔しまーす」

初めて入ったその部屋は、ちょっと散らかってる。
汚いんじゃなくって読みかけの雑誌が開いておいてあったり、朝使ったであろうコップがそのままだったり。

「ちゃんと片付けなよー」
「えー？そんな気になる程か？」

濡れたジャケットを脱ぎながら、カズは洗面所へ入って行く。

「あ、週末に彼女が来て片付けてくれるんでしょ」

戻って来た彼に言うと「別れたし」と、私にタオルを渡しながら言った。

「えっ！？また？」
「また、って何だよ」
「だってカズ、彼女コロコロ変わり過ぎじゃ無い？もう何人目？」

タオルで髪を拭きながらちょっと笑うと、腕を痛い位に掴まれる。

「いたっ...何...」
「何で分かんないの」
「......」
「いつまで待たせんの」
「...え...？」

腕を引っ張られ、ソファに雑に座らされたと思ったらすぐにカズが私の体を押し倒した。

「男女の友情なんか、存在するとでも思ってんの？」
「...カズ...？」
「もう他のオンナでは誤魔化せないわ」

カズが少し、泣きそうな顔をして

「オトコの部屋に入ったって事は、抱いて良いって事だよね？」

乱暴にも感じる、キスをする。

・・・・・END・・・・・