存在 ページ19
「うわっ...」
試合から戻ってきてハンター館とサバイバー館を繋ぐ渡り廊下を歩いていると、カタン、と軽い音がした。
何かに躓いたようで、それでもなんとかバランスを保って転ぶのを防ぐ。
「何...」
細くて長い何かだ。
しゃがみこんで拾ってみる。
「.....」
__杖。
心眼のヘレナのものかと一瞬疑ったが、違うようだ。
最上部についている可愛らしい鈴にひらひらとした装飾があちこちに施されている。
これは、神鬼のあの人の...。
「なんでこんな場所に」
これがないと彼女は困っているのではないだろうか。しかし彼女の姿が見えないため、どう渡せばいいのやら__
「部屋の前に立てかけておくかな...」
せめて拾ったのがイライだったのなら良かったのに。
初めて話したのが僕だったり、大事な道具を僕が拾ったり__不必要に縁がありすぎて更に同情してしまう。
*
『鈴...鈴、どこ...!?』
落としたとしたら渡り廊下。
ジャックが私を抱えてきたときは既に私は鈴の杖を持っていなかったらしい。
つまりハンター館にも渡り廊下にもないとしたらサバイバー館なんだけど...そう考えると、サバイバーの誰かが私の杖を持っていったことになる。
取り敢えずジャックやマリーたちにお礼を言ってハンター館を飛び出したはいいけれど...渡り廊下にないのなら一体どこに行ってしまったんだろう。
『...あれ?』
走り回っていると、部屋が羅列した棟の方でノートンさんの姿が見えた。
それだけならスルーしたけれど、彼は明らかに私の部屋の前にいる。
『何してるんだろ...あっ!』
走るのをやめて様子を見ていると、彼はなんと私の部屋の扉に鈴の杖を立てかけていた。
__届けてくれたんだ。
私のものだって分かってくれて。放っておかずに届けてくれたんだ。
『ノートンさん...』
近くに行って話しかけても彼は反応しない。
それはそうだ、私の言葉は届かないのだから。
それでも行ってしまう彼に、どうしてもお礼を言いたかった。
他人に冷たいと噂の彼のしてくれたことだから、尚更。
『ノートンさん!』
「うわっ...!?」
彼の袖を思いっきり引っ張ると驚いた声を出された。ちょっと引っ張りすぎたかも。
『あ、ありがとう!!』
「....?」
最大限の声でお礼を言ったけれど、彼はまだ不思議そうな顔をしていた。
寧ろちょっと警戒したようにキョロキョロしている。
...目視されないってもどかしい。
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怜(プロフ) - 沙羅さん» ありがとうございます!!沙羅さんのコメントが嬉しくて私も毎回栄養補給させて頂いてます(?) 他作品の方はこれからも続くので、どうか末永くよろしくお願いします...! (2020年6月25日 0時) (レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
沙羅(プロフ) - 完結おめでとうございますとお疲れ様です…!どんな結末になるんだろうと色々妄想(?)してたのですが、ちょっと切なくて甘い感じ、好きです…!今回も栄養補給させて頂きました(エヘヘ)、ありがとうございます…!!喫茶店の方も楽しみにしてますね! (2020年6月24日 21時) (レス) id: 3aa856ffa1 (このIDを非表示/違反報告)
?mi?(プロフ) - ゆったり更新で大丈夫ですっ!気長に待ってますっ!! (2020年6月17日 4時) (レス) id: 9bb4cee45f (このIDを非表示/違反報告)
怜(プロフ) - ?mi?さん» ありがとうございます...!ゆったり更新ですがどうかよろしくお願いします! (2020年6月16日 18時) (レス) id: 6fe8036f83 (このIDを非表示/違反報告)
?mi?(プロフ) - 続きめっちゃ楽しみにしてますっ!! (2020年6月16日 3時) (レス) id: 9bb4cee45f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:怜 | 作成日時:2020年6月6日 16時