すのまんまの9人 3 (ページ20)

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痛みに泣くような夜ページ20

『iwfk』 fk side

時々、ひどく悲しい夢を見る。

大きな舞台の上で、俺はど真ん中に立っている。
客席には照明のせいで顔が見えないお客さんたちとたくさんのフラッシュをたくカメラ。

メンバーはいなくて、なぜか俺だけ1人でみんなに何かを伝えようとしている。

『…ごめんなさい』

『何も伝えられなくて、ごめんなさい』

そう謝るとシャッター音も拍手も消えて、クスクスと笑うような声が聞こえる。さっきよりも大きなシャッターの音が響いて、俺は耐えられなくなって、涙を流す。

誰も拭いてくれない。
俺は1人。抱きしめてくれる人も慰めてくれる人もいない。

ハッと、目を覚ますと深夜3時。
汗をびっしょりとかいて少しだけ涙目になっている自分。
こーゆう夜に限って頼りになる恋人はいない。

今日は某番組の兄貴と呼んでいる人たちと朝まで飲むとかいって、嬉しそうに出ていったから邪魔はしたくない。

優しい恋人には内緒でまた吸い出したタバコ。
星すら見えないベランダで、カチッとだけなるライター。

fk「……やな味」

タバコを吸っていったのは、デビューなんて夢のまた夢だった頃。

照の休憩の声と共に、飲み物を買うと嘘をついて喫煙エリアに向かった。

その頃、俺はなんとなくうまくいってなかった。
怪我をしたわけでもすごく嫌なことがあったわけでもない。
ただなんとなく気が重い。

fk「…なんでこんなに辛いんだろ」

真っ直ぐ前を向いて、進もうとするたびにこんなんでいいのだろうかと足がすくむような感覚に陥った。
それでも形のない、でも確かに掴みたいものにずっと浮かされてふわふわと進む毎日。

深く吸い込む紫煙。
おいしくはないのにやめられない。

ガチャと音がして、目が合ったのは。

iw「…ふっか？」
fk「…照」

うちの中でも真っ直ぐな心の持ち主だった。

iw「ふっか、タバコ吸うんだ」
fk「ま、まあ…うん。照は？」
iw「吸わないけど…吸ってみようかな」
fk「いる？」
iw「ん、ありがとう」

吸ったこともないくせに一丁前に火をつける。
俺よりも絵になるその姿に、少しだけ見惚れた。

fk「どう？」
iw「うーん…美味しくはないけど」
fk「うん」
iw「頼りたくなる感じはあるね」
fk「…なんだよそれ」
iw「んー、タバコよりさ、頼ってくれない？」
fk「ん？」
iw「俺を」
fk「……」

いつもみたいなその微笑み。
見透かすような言葉が俺を締め付けた。