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般若の面を被った響凱はそのまま四月一日に連れられて霊園屋敷に着いた。

戸を開けて入ると兎面の少女がいつものようにお出迎え。



....なぜだが人を食いたくなくなっていた。



驚いている響凱に彼女は言う。


『私の作る面には鬼の食欲を抑える効果があるんです。さすがに完全ではありませんが』


彼女を何者かとまた問いたくなった。

そんな才能があればどんな仕事だって就けただろうに。

その容姿なら、花魁にでも良い家の嫁にも、花形女優にも

声なら、歌手にでも

その頭脳なら大きな病院の医者でも政治家でも教師にも

なんだってなれる。

だが、彼女は現実からかけ離れたこの仕事を選んだのか。

こんな生き地獄を。


「お兄さん誰ー?」


と少女に話しかけられた。
四月一日は新しい職員だと話す。

すると、少女は面を外して「これからよろしくね!」と明るく笑った。

彼女の顔は半分火傷を負っていた。

響凱は初めて食う以外の目的で人に触れ、暖かくなった。


「よろしくお願いする....」




次に案内されたのは一部屋の和室。


『あなたの部屋です』


「小生はいらない。こんな....良いところ」


迎え入れられ、仕事を貰った彼にこれ以上もてなされるのは気が引けた。

だが、彼女は首を横に振る。


『ここで働く以上、部屋は与えます。それに小説また読みたいですし。しっかりと罪を償ってください』


お面を外ずしては笑う彼女はいつか救いを求めた仏のようにも見えた。

いつの時か彼が鬼になって間もない頃、初めて子供を食った。

彼は初めて死ぬほど後悔した。


今やその感情も消え失せている。


(小生も彼女を食ったらまたあの時のように後悔するのか....)


四月一日の血は独特なものだった。

稀血とは違う鬼の食欲を増加させるものではなく、鬼自身を惑わすような

だが、嫌悪する匂いでもあった。

甘く菓子のようで微かに藤の香りもする。

溺れる依存性のあるまるで毒のような。


『響凱さん?』


名前を呼ばれてハッとする。


「なんでもない。わかった...この部屋を使おう」


『はい』


静かに笑う。月のような彼女は時折悲しい顔をした。

罰を請け負う。罪を償おう。

彼女のために。

この首がいつか鬼狩りによって撥ねられる時まで。

第四話 刀の話→←弐



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甘喰い(プロフ) - 鴉さん» 全然更新できなくてすいません!!感想ありがとうございます!!しっかり読み返して誤字など直していきます...ご指摘ありがとうございます!!助かります (2020年2月3日 18時) (レス) id: 8ab12c2783 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 更新されている分読ませていただきました。とても面白かったです。読んでいて思ったのは、結構誤字が多かったので、一度ご自身で読んで確認された方がいいかもしれません。突然このような指摘で申し訳ないですが、更新頑張ってください、応援してます。 (2020年2月2日 21時) (レス) id: f7552a9a46 (このIDを非表示/違反報告)
甘喰い(プロフ) - 涙さん» 毎度毎度ありがとうございます....申し訳ないです!引き続き宜しく御願い致します!! (2020年1月5日 9時) (レス) id: 1876c611a8 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 遊楽ではなく遊郭です (2020年1月5日 2時) (レス) id: 5e09944bd4 (このIDを非表示/違反報告)
甘喰い(プロフ) - 涙さん» ほんとだ!!わざわざありがとうございます!!! (2019年11月22日 12時) (レス) id: 1876c611a8 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:甘喰い | 作成日時:2019年10月22日 20時

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