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サッカーに打ち込んでいた学生時代、ひょんな事からとある芸能事務所の練習生になることが決まり、レッスン場で出会ったのがコイツら6人だった。
仕事があんまり貰えなかった時にいきなりグループを組まされて、歴だってほとんどないのに最年長で、どうしたらいいかなんて全く分からなかったけど、どうしようもないくらい楽しい日々だった。
どこでこう変わっていったのかな、なんて思い出そうとは思わないけど、目の前で話す二階堂の姿を見ながら、もうここも任せても平気なのかもなぁ、なんて考えていた。
そのまま何事もなく打ち合わせは終わったし、隣に座っていた横尾さんと予定だけ確認して手元の荷物の片付けをしていると、
「渉、今日これだけだし送りいいや。玉と健永と昼メシ食ってタクシーで帰るわ」
と、横尾さんに一方的に告げる藤ヶ谷。
俺が隣にいなきゃもっとしっかり話すだろうに、なんかごめんな、なんて自嘲気味になりながら席を外してスクリーンの片付けを始めた。
入口付近でなにか話す横尾さんと藤ヶ谷の声を聞き流しながら、俺ってマジで何なんだろ、そう考えずにはいられなかった。
なぁ、教えてくれよ藤ヶ谷。
俺って一体、お前の何だった?
お互いに愛を確かめ合い、心を通わせ合ったあの日々は、今はもう俺の心の中にしか存在しないんだろ?
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作者名:mr | 作成日時:2021年5月25日 18時