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俺が事務所に入所したのは、高校生の時だった。
周りはちびっ子ばっかで、慣れもしない歌やダンスに必死に着いていきながら、どうしたらいいのか、そんなことばかり考えながらレッスンに臨む日々だった。
怒られて、ひたすら練習してなんてことを繰り返すうちに踊る列も1列、また1列と前に近づくことは、確かにあの頃の俺の原動力だったと思う。
そんなことを続けていて、いつの間にかシンメになったのが藤ヶ谷だった。
年下なのに先輩で、俺のせいで何回も怒られるくせに、「きたやまー!」って、弾ける笑顔で駆け寄ってくるアイツのことが、いつからか特別だった。
なんとなく同じ括りで活動してた俺たちに名前がついても、俺が背中を預けられる人は藤ヶ谷ただ1人で、抱えちゃいけないこの気持ちをどうにかしないといけない、そう分かっていても、苦しいくらいに好きだった。
だからこそ、思いが結ばれたあの夏のことをいまでも昨日の事のように思い出すことができるし、こんなマイナーな恋愛を表立ってできるわけではないと分かっていながら、沢山の思い出と幸せの詰まった日々は俺にとって何にも変えられないものだった。
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作者名:mr | 作成日時:2021年5月25日 18時