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日は傾き、肌寒くなってきた頃 現場は今までにない緊張感に包まれていた。
一発録りに備え スタジオ近くの砂浜におり、日が沈むタイミングを待つ3人の姿を、スタジオの屋上から1人眺めていると、スタッフ達が慌ただしく動き出し、いよいよ撮影が始まるらしい。
最高のロケーションの中で歌い、踊る姿は美しくて、その中でも特に藤ヶ谷は圧倒的だった。
目をそらすことが出来ず、そのまま撮影を見届けると同時にふーっと息を吐き出し、柵に背中を預ける。
しばらく佇んでいると、二階堂から電話があり
「ミツ?今どこにいんの?もう外撮り終わったけど」
「あーわり。屋上にいるから今から向かうわ。」
と言い、急いでスタジオへと歩みを進める。
スタジオに戻ると、もう撮影が再開してる傍らで二階堂たちが外での機材の片付けをしているのを見つけ、しれーっと紛れ込む。
「ミツ、さっきの外撮り見なかったの?
3人ともすげーかっこよかったよ。」
「ん、上から見てたよ。」
「上?屋上のこと?見えるんだ〜、へー!」
そう、本当に3人はかっこよかったのだ。
近くで見れないのは、ただ藤ヶ谷の近くにいない方がいいとか、そんな理由だけじゃなくて、俺の中のもっと汚くてドロドロした部分がそうさせているんだ、
純粋な気持ちでこうやって俺の下で働いている二階堂や、本人たちを1番傍で支える横尾さんと宮田のような綺麗さは、初めから俺にはなかった。
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作者名:mr | 作成日時:2021年5月25日 18時