41話 ページ9
だが、どれ程読んでも太宰が何故こんなものを進めてきたのか、Aは理解出来なかった。Aが自分で哲学を求めたのは、単に興味が湧いたから、というだけではない。太宰が何故自分に勧めてきたのか、そして何故死にたいと願うのか、それが分かる気がしたからだ。
結論から云えば、分からずじまいに終わった。聞くところによれば、アメリカマフィアではマキャベリを読むのが鉄則だそうだ。けれど、太宰が渡してきたのはあんな冷徹なものではなく、人とは何かについて淡々と語った思想家達が多かった。敢えて渡してきていないだけかもしれない、と、太宰が渡してきた以外のものも読んでみたが、それでもAの求めるものは存在しなかった。
そしてAは、未だに答えを出せずにいる。
＊ ＊ ＊
どの位の時間が経ったのだろうか。
女は十冊近くの本を抱えて戻ってきた。Aは結局、本の背表紙を見つめたまま、一冊の本も手に取らずに終わった。まあ、余計な指紋を残さずに済んだので良かったのかもしれないが。
女が持ってきた本は、文庫本から辞書に至る迄、ジャンルは様々だった。Aはその本達を覚えようとしたが、女の手で幾つか見えないものがあり、それは叶わなかった。
「それじゃあ、着いてきてください。因みに、お急ぎですか？」
Aは少し迷った。以前はこんな質問など、されなかったはずだ。きっとショートカットルートでも完成したのだろう。だが、それならば最初から短距離の方だけにしておいても良いような気もする。
「急ぎの場合とそうでない場合で違うんですか？」
「ええ。お急ぎの方は212番通路へ、そうでない方は地下通路へとご案内しています」
212番通路というのは、マフィアのビルの地下にある、とある情報室付近の扉へと繋がる通路だった。だが、そこに通されるのはあまりよろしくはない。その情報室というのは、そこで主に「潜入捜査をしていた人物達が」収集してきた情報を纏める作業場である。そして、212番通路は、潜入捜査からマフィアに報告を入れる際に良く使われるルートだった。一番直結しているので楽だからだ。いつの間にか、この図書館にもその道が通っていたらしい。
潜入捜査員に良く使われる、と云うことは、裏を返せばそれだけ多くの人が使用しているということになる。多くの人に会うのは、出来るだけ避けたかった。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
