72話 ページ42
「逆に、Aさんはどう思ってるの？」
自分の異能のこと。そう聞くと、Aはすぐに返事をくれた。
「私の、異能は」
その直後。突如、強風と共に轟音が鳴り響いて、彼女の声をかき消した。その音は、雲一つない空のはずなのに、ひどく落雷の音に酷似していて。
「―――――、―――――――――」
え？ と聞き返すも、彼女は答えてくれなかった。
そのまま、その場はお開きになった。
＊ ＊ ＊
ただいま、とAは部屋の鍵を開けた。扉を開けた途端、太宰が憎らしそうにこちらを見つめているのが目に入ったので、少々気分がよろしくなる。彼が大事にしまっていた酒を奪ってやったのだから、彼がこの反応を示すのもまあ当然と言えば当然だろう。とはいえこちらも気軽に酒が手に入る身分ではないし、どうしても度数の強い酒が飲みたかったのだ。一昨日の嫌がらせの仕返しにも丁度良いし、と思う。何事もwin-winだ。
「で？ 酒を堪能したAちゃん。お味の感想は？」
「葡萄酒の方がいい」
「そう言うと思ったよ！ 価値が分からない人間に飲まれるなんて、酒も本当に哀れなものだ」
きっと私に飲まれたかったに違いない、と拳を作る太宰。だが、結局のところそんなの早い者勝ちだ。さっさと飲まなかった方が悪いに決まっている。おいしゅうございました、と形だけでもお礼を述べて空になった瓶を振れば「あああ私の蒸留酒がっ」と嘆き悲しむ声が聞こえた。
それはさておき、とAは本題に入ることを決めた。本題は、太宰との交渉だ。今回は非常に、非常にハードルの高いものとなっている。何のハードルが高いかと言うと、彼に理由を聞かれることなく、こちらの要求を飲んでもらうというハードルだ。いやそもそもの話、この過去五、六年間の間に一度でも太宰相手にそんな芸当を成し遂げたことがありますかと問われれば、否ですと回答できる自信しかないのだが。しかし、これは必ず成功させなければならない。Aはそれを理解していた。
「ね、太宰さん。私もう18になったし、保護者やめてもらっていい？」
努めて明るい口調で、交渉の口火を切った。そう、それこそ、買い物行ってきてと言うくらいの、軽い調子でお願いしてみる。
「なぜ？」
太宰の声を聞いて、一つ目は失敗したと悟る。なれど、これは想定内。流石にここで、はいわかりましたと答える馬鹿はいないだろう。こんなことを突然言われては疑問を持つのが当たり前だ。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
