68話 ページ36
「……って、よく考えたら敦さん大丈夫？ マフィア、というか組合に狙われるんでしょ。本人に知らせておかなくて平気なの？」
「まあそれは、社に戻ったら話すさ」
一先ず懸賞金作戦は失敗したみたいだし、と太宰が部屋の壁を見る。その方向は、元A、現敦の部屋だ。耳をすませてみると、微かに生活音が聞こえてきた。なるほど、彼は無事のようだ。
芥川のところで覗き見た資料によれば、本日の夕方が敦の引き渡し日となっていた。そして、今はもうその時刻も過ぎ、日もとっくに暮れている。失敗したのは確実だろう。
「となると、奴らが街にやってくるだろうね」
「組合が、横浜に……」
70億もかけたのだから、そこまでご執着なら、自らの手を使ってでも奪いに来るだろう。何が敦をそこまでの価値へ引き上げているのか、Aには見当もつかなかったが。それに、もう一つ懸念材料が残っている。マフィアだ。彼らとて、70億が手に入るという前提で動いていたはずだ。となると、多少の金は動いたはず。だが、彼らは作戦に失敗した。つまり、大損害を被ったわけである。これから何も行動がないなどということはないだろう。
「あーあ、問題が山積みだ」
どうしてこうも次から次へと問題が生じてくるのだろう。組合が太宰の言う通り金と異能力であれこれやるような秘密結社なのだとしたら、それこそ本当に金と武力でものを言わせて探偵社ごと潰しにかかってくるかもしれない。汚い手だが、世界とはそんなものである。十五年くらい前の戦時下でも、五年くらい前の抗争下でも、今でも、大して変わらない。
Aがため息をつくと、太宰は膝を叩いて立ち上がった。
「今は考えても仕方ない。それじゃあ私はちょおっとヴェッキオ橋にでも行ってくるよ」
「え、やめてよせめてポルタ・ロッサ通りにして」
「お父さん、お願い！」
「それ逆です、逆」
娘がお願いしていたのは、身投げではなく結婚の方だ。
外に行くならついでに何か買ってきて、と靴を再び履き始めた太宰に声を掛けると、彼はそれに応じず、代わりに「おや」と声をあげた。
「A、手紙が来てる」
手渡されたそれは、やけに上質な紙で出来た封筒だった。宛先は確かに、田内A殿となっている。手紙がくるような文通相手もいないはずなのに、一体誰からだろうか。差出人を見ようとひっくり返した途端、Aは手紙を取り落とした。
「A？」
差出人は、死んだはずの中隊長だった。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
