67話 ページ35
「つっかれたあ！」
それからしばらくの後。Aと太宰は無事にマフィアを抜け出して、社員寮まで到着した。靴を脱いだとたんに、床と熱烈なキスを交わす。素晴らしい。生きている。生きて、マフィアから帰ってこれた。もうここは確実に安全だ。突然銃も飛んでこないし、異能で殺されることもない。そのことを実感しながら床を転がっていると、後から入ってきた太宰が顔をしかめて「い草がつくよ」とどうでもいいことを指摘した。まあ確かに、現在Aの服にも髪にもい草が大量についているけれど、それよりも生を実感したい。ああ素晴らしき我が人生。
とは言え、太宰もやはり多少は疲労が溜まったらしく、疲れたねえ、と言いながら、玄関近くに腰を下ろした。疲れた、本当に疲れた。しかも悲しいかな、Aは休暇申請をしてしまったために、もしかすると今日の働きはただ働きになってしまうのだ。有給休暇にでもされていない限り。奉仕活動と言うにはあまりにもオーバーワークすぎやしないだろうか。働いた時間は丸一日、危険を鑑みれば危険手当ぐらいは出していただきたい。
「それなら社に申請すればいいじゃないか。マフィアに行って情報取ってきました、って」
「ああ、そっか。それもそうだね。太宰さんも？」
「貰えるお金はいただいておかないと」
借金で首が回らないからねえ、と太宰は笑っているが、それはただ単に川で財布を流されたり、酒と味の素を突然買い込んだりと杜撰な管理と無計画な使用が引き起こしているものである。やろうと思えば簡単にたくさん稼げるだろうし、管理だってきちんとできるだろうに、この男は何故かそれをしないのだ。
「でもびっくりしたよ。まさか組合が敦君を狙っているとは」
「組合がね……」
Aは目を遠くへやった。まさか、組合がマフィアと仲良くするような組織だとは思っていなかったからだ。Aが知っていた組合は、お金持ちが集まって慈善活動やら政治活動やらあれこれやっている組織、という印象だった。A自身は悪い噂を聞いたことがなかったため、その名前をマフィアで見たときには心臓が止まった。
「表向きはいい人間もいるからね。そういう組織は沢山あるさ」
確かに、マフィアもその一例だ。マフィアとて、慈善活動を行うこともある。傘下に企業がいくつかあるし、例の図書館だっていい例である。太宰曰く、組合は三文小説の悪玉のような奴ららしく、莫大な資産と異能力で策謀を企む秘密結社なのだそうだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 210人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
