51話 ページ19
けれど、と心の中ではやはり、まだストップがかかっていた。いい加減疑ってしまう自分が嫌になってくる。地下通路の出口が記憶通りだったならば、こうも警戒はしなかったかもしれないが、初っ端でうまく合言葉が伝わったことで油断しきっていた結果がこの警戒しすぎの様なのだ。仕方ないと云えば仕方ない。きっと、無事に社員寮に戻れた暁には、疲労とストレスでぐったりしているだろう。
下がってください、と樋口は云い、Aは云われた通りに後ろに下がった。樋口の持つ懐中電灯は扉側しか照らしていない。どうせこちら側は見えていないのだから、と、Aは扉の向こう側に何がいても大丈夫なように、全身の神経を研ぎ澄ませ、指先に微かに力を込めて、いつでも電気を流せるように準備した。
どうか、何もいませんように。いたとしても、せめて私の対応できる範疇のレベルでありますように。
そんなAのことを知ってか知らずか、樋口は勢い良く扉を開いた。
＊ ＊ ＊
結局、Aの全ての不安は骨折り損のくたびれ儲けに終わった。扉の向こうには何もなく、ただ樋口の云うように通路が続き(その通路にも電気は通っていなかった)、そのすぐ後に記憶していたのと同じ出口に無事出ることが出来たのだ。
だが、脱出できた反面、悪いことも起きた。ほんの二、三時間とは云え、電気を全く感じ取らなかったA。それが出口から外に出た途端、照明の明るさと電気の多さに一気に襲われ、ひどい頭痛に見まわれた。エスカレーターにエアコン、防犯カメラに照明等、それらのエネルギーが一斉にAに向かってぶつかってくる。普段は大都会横浜に住んでいるだけあって、街の至る所に電気が通っている。なので、電気のない空間に行くことはほとんどない。だから、常に電気が存在する環境に慣れてしまっていたのだ。顔をしかめつつ周囲を見渡すと、サングラスをかけた構成員達が無表情で歩いているのが目に入った。
ああ、どうして皆、これを感じないんだろう。
Aは思わず呻き声をあげた。頭の中に電気が入り込んで、脳内で暴れまわっているような感覚がする。異能がまだ暴走していないのは、我らが社長の異能力、『人上人不造』のおかげだろう。しかしこれ以上となると、流石にどうなるか分からない。太宰がいれば無効化してもらえるが、現在Aのそばに太宰はいなかった。こうなってしまったからには、一刻も早く太宰に会わなくてはならない。
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麗(プロフ) - 続きを楽しみにしてます！！ (2021年5月22日 17時) (
レス) id: 411fa15fdd (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - わー！！！！！更新されている……めちゃめちゃ嬉しい、、、、、これからも応援しています！！！ (2020年4月30日 22時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
こよひ(プロフ) - りか（かりんとう）さん» 遅くなってしまって申し訳ありません。お読みいただき本当にありがとうございます。私事なのですが、来年受験のためしばらく更新をするのは厳しいかもしれません。気長にお待ちいただければ幸いです。 (2020年1月21日 15時) (レス) id: 38c890fd29 (このIDを非表示/違反報告)
りか（かりんとう）(プロフ) - とても面白いです！！続きがとても楽しみです。更新まってます……！！ (2020年1月2日 23時) (レス) id: f31ecb66db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：こよひ | 作成日時：2019年5月2日 23時
