《トドメの接吻》 愛は誰にでも

涙のわけ ページ41

尊氏「A・・・泣いてるの？」



尊氏に言われてから自分が泣いていることに気付いた。



この涙は長谷部さんの近くにいながら助けることができなかった悔しさからなのか。



または人殺しがそばにいたという恐怖からなのか。



自分には分からない。



尊氏は私をゆっくりと降ろした。



それに合わせて私は腕を離したが、尊氏は私を抱き締めて来た。



「尊氏？」



尊氏「ごめん・・・何度もAを危険な目に」



「尊氏は何も悪くないでしょ？謝らなくても・・・」



尊氏「僕が悪いんだ。・・・僕が悪いんだ」



泣き止んでいた私の頬に水滴が落ちて来た。



尊氏も泣いてるの？



「尊氏・・・」



尊氏は何も言わないけど私を抱き締める力を強めた。



尊氏は何を思って涙を流しているのだろう。



私には何も分からず、ただただ尊氏を抱き締め返すことしかできなかった。





あれから尊氏は涙のことは何も言わず私を車に乗せた。



尊氏は“美尊も連れて来る”と言ってまた病院に入って行った。



どうしてこんな不幸ばかり起こるのか。



そんな疑問ばかりが頭に残った。






尊氏Side



旺太郎「長谷部が殺されたって何があったの、どういうこと？一体誰に！」



美尊達の元に戻った僕は事情を聞いている旺太郎の胸ぐらを掴み上げた。



尊氏「誰に殺されたと思う！堂島旺だよ！」



旺太郎「えっ？」



尊氏「長谷部は君の父親に殺されたんだ。Aまで襲われて」



旺太郎「嘘だろ・・・！」



旺太郎が僕の手を振り払ったところに刑事が来た。



刑事「堂島旺の、息子さんですか」



旺太郎「・・・あの、何かの間違いじゃ」



刑事「こちらの看護助手の方が今朝お父さんを取り押さえたので間違いありません」



旺太郎「本当に堂島旺だったんですか」



看護助手「今朝、僕が長谷部さんの病室に行ったら、男がナイフを握り締めていて、慌ててその男を取り押さえて、その場で通報しました」



旺太郎「そんな・・・」



現場の状況を聞いて旺太郎の表情が曇った。



刑事「お父さんと長谷部さんの間に、何があったんですか」



旺太郎「知るかよ。親父と長谷部は何の関係もない」



新井「そうかな」



おじさんが旺太郎に近付いた。



新井「確か君の父親は昔、勤務中に大きな事故を起こして逮捕されたよな。その時の雇い主が長谷部君のお父さんだろ。よくもこんな酷い仕打ちをしてくれたもんだ・・・ねぇ美尊さん」

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