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side F 9 ページ26

「ごめん 散らかってるけど・・適当に座って」





予想外の展開に 身体よりも思考がついていかず
敷かれたラグの上に こじんまりと座る


くつろげるわけもなく 無駄に正座とかしてしまう自分が滑稽だ





乗って行けと 誘ったのは自分のほうなのに

いざ助手席に北山が座ると

喉がつっかえた様に 何の言葉も出てこなかった





なんで 玉といたのかとか 聞きたいことは山ほどあったのに

考えれば考えるほど 何から話しだせばいいのか見つからず 押し黙る


横目で北山を窺うと 同じように 難しい顔をして同じように黙っているから


決して近くない北山の家までのドライブも あっという間に終わって





今日はもうこのまま帰るしかないのかと 自分のふがいなさにへこんでいたら



「ちょっと上がっていかない?」



っていうから 目の前に餌を出された犬よりもわかりやすく 飛びついてしまった











「ごめん おしゃれな飲みもんとか一切なくて・・」



目の前にコトンと置かれたミネラルウォーター



その透き通るペットボトル越しに 北山を見つめると


俺より少しだけ離れたところに 北山が腰を下ろした

何から話せばいいのか 思案していると
北山が口をひらいた





「あ・・あの、今日のライブ、一番良かったよね」



「あ・・あぁ、うん」




さっきまでの高揚感を思い出す


ステージ上では あんなにしっかりこいつを見つめられたのに

場所が変わるだけで途端に羞恥心がこみ上げてくるなんて





「もっと・・やりたかったな」





正直な言葉がこぼれた





「うん・・俺も」





何故か 少し頬を染めて 嬉しそうにはにかむ北山の笑顔が

俺の心の柔らかい部分をくすぐった






「ねぇ・・」



「玉と・・なに・・話してたの?」







ずるいのはわかっているのに 自分の本心は隠したままで

さっきからずっと引っかかっているモヤモヤを 北山にぶつけた

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作者名:ピンクピーチ | 作成日時:2019年2月19日 10時

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